「漫画の書体バチッと決まると気持ちいい!」漫画家・うえはらけいたさんがフォントの魅力を描き下ろし漫画で紹介
PR 公開日:2024/8/29
「漫画」という表現で実は大きな役割を果たす「フォント」。あなたは日頃から上手に使いこなしていますか? フォントひとつでいかに印象は変わるのか――『ゾワワの神様』(祥伝社)やSNSで人気の漫画家・うえはらけいた先生に、国内最大級のフォント・書体販売サイト「デザインポケット」のフォントを利用した描き下ろし漫画をお願いしました!
漫画家・うえはらけいたさんに「フォント」と「漫画」についてインタビュー
――描き下ろしていただいた漫画は高校の「フォント部」が舞台です。面白い部活ですね!
うえはらけいたさん(以下、うえはら):多分フォントおたくみたいな人がいると思うので、そういう人が共感してくれるんじゃないかと。僕も文字好きなんですが、部活とかサークルとかが成立するくらい文化的な深みがあるものだと思っています。
――漫画にもありましたが、台詞とフォントがガシッと合わさると気持ちいいですね。
うえはら:そうなんです。商業漫画ではフォント選びは編集者の仕事になったりしますが、僕はネームの時点から強調するところは太めの明朝にしたり、文字選びを自分でやってテンションを上げています。実は自分の手書きの文字がすごく汚いんで、それで描いていると内容より文字の汚さに目がいってテンション下がっちゃうんですよ(笑)。
――タブレットで描くなら、文字のタイピングもすぐ可能ですしね。
うえはら:そんなに難しい作業じゃないし、実際、ほんとにフォント次第で印象は変わります。強調したいことや意味深な台詞なんかは商業作品だと絶対フォントが変わっていますよね。それを自分のネーム段階で再現できると完成した状況がよりうかびやすくなりますし、あとで編集者にネームを見せる時も「ここが重要なシーン」という意思表示にもなります。
――先生はもともと広告代理店で働かれていたとのことですが、その頃から文章とフォントにこだわりはありましたか?
うえはら:僕は新卒でコピーライターになって、その後、美大に行って、デザイナーとして再就職しました。フォントに関しては美大時代もデザイナー時代も関心がありましたが、最初に興味を持ったのはコピーライターの時代ですね。コピーライターとしてちょっとこなれてくる10年目くらいになると、企画書とか打ち合わせの資料とかのフォントにこだわる人が出てくるんです。直接の先輩にも「このフォントを使って」って依頼されたことがあって、実際にやってみたらフォントを変えるだけで印象も伝わりやすさも変わると実感しました。
――広告のコピーは短めですが、漫画は台詞とはいえ長い文章です。そうなると文章とフォントの関係は変わりますか?
うえはら:漫画の吹き出しが全部こったフォントだとやっぱり読みにくいので、キメ台詞や意味のある台詞に工夫したフォントを使って、それ以外は極力同じフォントを使う感じですね。実際、商業出版の多くはそうなっていますよね。ちなみに漫画の基本は「アンチック書体」っていう、明朝体とゴシック体が混在したフォントなんです。長文を読み続ける上では、意外とそれがストレスが少ないのかもしれませんね。
もっと「フォントで遊ぼう」!
――デザインポケットのフォントをテーマに漫画を描いていただきましたが、いかがでしたか?
うえはら:いろいろなフォントがあるので面白かったですね。中でも「目的別フォントガイド」がすごくよくて、漫画を作る上でもかなり助けられました。普段はたとえばホラー系なら「おどろおどろしい書体」とかで画像検索してイメージに近いものを選んでいくんですが、こうやってまとまってると探しやすい。「作品にあうフォント」みたいなコーナーもあって、「『孤独のグルメ』にあう」とか「『ゴジラ』にあう」とか、ちょっと中の人の趣味が微妙ににじみ出てるのも面白かったです。
――実際にフォントを入れてみた感じは?
うえはら:やっぱりより感情がのってきて、原稿がリッチになりますよね。僕の場合、SNSで発表する漫画はあえて描き文字にすることもありますが、そこでポップなフォントを使ったりすると表現に豊かさが出るようにも思います。さらにプロっぽさも出ますよね。全部描き文字で処理すると、手がこんでいる印象になる反面ちょっと単調に見えることもあるので…。
――こうやっていろいろなフォントがあると、逆にストーリーが浮かんでくるなんてこと、ないですか?
うえはら:そこまではないですが(笑)、このフォント使ってみたいなっていうのは出てきますよね。「この書体使うとしたらどういう場面かな?」ってイメージしてみたり。さすがに台詞自体に使うのは難しい場合もあるので、ワンポイントで大きくレイアウトした文字とか、中に出てくる看板の文字とか、そんなところに使ってみたいと思ったりします。
――もっとこういうフォントがほしい! というのは?
うえはら:僕が想像しうる範囲のフォントは、絶対あると思うんです。なので、もっと知らなきゃいけないなって思いますね。とはいえ探す時間もかかってしまうので、自分でぱっと引き出せるようにしておいて、ここぞというときに使えるようにしとくというか。めんどくさがらずにフォントを変えてみるとか、そういうのも大事なんだと思います。
――趣味で漫画を描いている方でも、こういうフォントの世界にふれると何か発見がありそうですよね。
うえはら:そう思います。まだあまり文字に親しんでないとしたら、安易にいろいろ使ってみたらいいと思います。数が多すぎてクラクラしちゃうかもしれないですけど、はじめは気楽にノリで選んで使ったらいいと思います。たとえば漫画じゃなくても、普段の企画書の表紙とかでもいい。表紙だったら別に多少変えても怒られないでしょう(笑)。
――「下半期販売計画」がおどろおどろしかったら、それはそれで怖いですが(笑)。大喜利なんかもできそうですよね!
うえはら:そうですね。「正しく的確な文字を選ばなければならない」じゃなくて、すごく遊びがいのあるカルチャーだと思います。実際、フォントには「人格」みたいなものを感じたりするので、定期的に擬人化もされてるようですし。
――今回の漫画もまさに「フォントで遊ぼう」ですね。
うえはら:まさにそうです。実はシリーズ化できそうだなと思っていたりして…(笑)。
――それは楽しみです。ぜひお願いします(笑)!
取材・文=荒井理恵
▼漫画で使用したフォントはこちら
うえはらけいた
1988年、東京都生まれ。コピーライターとして勤務していたが退職し、多摩美術大学グラフィックデザイン学科に編入。その時からマンガを描き始め、SNSやWEBメディアを中心にマンガ作品を発表している。『コロナが明けたらしたいこと』(アスコム)で第12回コミチ漫画大賞を受賞。ほか著書に、広告制作現場のリアルな日常を描いた『ゾワワの神様』(祥伝社)がある。
X:@ueharakeita
note:うえはらけいた | 漫画家
デザインポケット
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