池上永一さん最新作がhonto限定で連載開始!古の琉球王国で暮らすおてんば少女の運命を追う、壮大な歴史小説
PR 公開日:2024/8/30
泥濘に浸からされているような、うだるような暑さの中、ひとつの突風が駆け抜けていったかのような気分だ。その風は力強く爽やかで、それでいて、何をしでかすか分からない。古の琉球王国の小さな島で暮らすひとりの少女の運命を追う歴史小説『レッドカメリア』の連載が2024年8月30日にhonto限定でスタートした。著者は、人気作家の池上永一さん。
池上さんといえば、『レキオス』『シャングリ・ラ』などのSF小説や『テンペスト』『黙示録』などの沖縄を舞台にした歴史小説で知られ、2017年には『ヒストリア』で第8回山田風太郎賞を受賞したことも記憶に新しい。『レッドカメリア』もまた今までの池上作品同様、壮大なスケールの物語になるに違いない。無料公開された「第一章 椿」を読んだだけでも、鼓動はうるさいほど高鳴った。
時は1605年。琉球王国の玄関口である那覇港の入江から物語は始まる。明国へ向かう進貢船の出航を見に来たのは、那覇港の奥にある女ばかりの離れ小島・渡地で暮らす少女・真花。彼女はそこで、神職組織・ノロの中でも、特別な神女・三十三名に選ばれた、少女・伊集(イジュ)の霊力の高さ、人たらしぶりを目のあたりにする。真花と同年代の伊集はまた別の夜に現れ、真花に「あなた、もうすぐ父君に会えるわよ」と予言を授けた。
真花は父親に会ったことがない。手がかりは父親が娘のために明国から買ってきてくれたという鶏血石の首飾りだけ。琉球の女たちの装飾品といえば翡翠の勾玉が定番なのに、父親があえて明国で高貴な人の印鑑の母材として使われる鶏血石を選んだことから、真花は父親が明国と深いつながりがあるに違いないと推測している。もしかしたら、琉球王の即位を認め、詔書を授けるために来琉する明国の冊封使節団の一員なのかもしれない。翌年、冊封使節団が那覇港を訪れた時、真花はパレードを縫うように割り込んで父親を探すのだが……。
宝石をちりばめたように青く輝く海。冊封使節団の船団が那覇港に現れた狂乱で、老若男女が踊り出すカチャーシー。緑の山に覆われた頂上に深紅色の花が咲いているかのように映える首里城。日本とはまるで異なる、狂おしいほど美しい琉球王国の景色は、瞬く間に私たちを飲み込んでいく。冊封体制の堅持のためにあれこれ画策する王府の重鎮の姿も見てとれ、そんな琉球王国の情勢も気になるところだが、真花はそんなことは気にも留めず、ただただこの世界を駆け抜けていく。そんな姿にどうしてだろう、思わず笑みがこぼれてしまうのだ。欲望渦巻く渡地で育ち、「用心しないと足を掬われる」と常に意識しながらも、真花は純粋でまっすぐ、男まさりで好奇心旺盛。母親は琉球一の機織り名人で女としての素養をすべて兼ね備えているというのに、真花が得意なのは、剣術など、武闘派の男子が好むものばかり。奉公先を見つけるのにも苦労しそうなのに、彼女が奉公に行くことになるのはあまりにも意外な場所で……。
「私はまだアンマー(お母さん)と別れたくない」
まだまだ母親に甘えていたい年頃、幼さの残る少女はこれからどう成長していくのだろうか。全く先の展開が読めず、だからこそ、続きが気になる。honto限定のこの連載は、1話の前半・後半が無料で公開される後、以降は半月1度に半話ずつ配信予定、単行本は来年9月の刊行予定なのだという。ああ、早く続きが読みたくてたまらない。琉球王国を駆け抜ける真花の姿を、待ち受ける運命を、一緒に見届けよう!
文=アサトーミナミ
◆『レッドカメリア』連載ページ
https://honto.jp/cp/ebook/2024/redcamellia.html