新郎は式の当日「写真」のみ!? 初対面は結婚して2週間後。昭和初期の海軍士官夫婦の「うぶ」すぎる日常

マンガ

PR 公開日:2024/9/11

波うららかに、めおと日和"
波うららかに、めおと日和』(西香はち/講談社)

 ガーデンウェディングや、家族のみの結婚式など、形式にとらわれない結婚式が人気を博している昨今。式のスタイルは多様化していても“新郎が写真のみの結婚式”をした、という人は少数派かもしれません。

「父が見つけてきた結婚相手は 帝国海軍の中尉で式の当日「写真」でした……」

advertisement
波うららかに、めおと日和

波うららかに、めおと日和

 そんな独白とともに結婚式のシーンからはじまるのが、マンガアプリ「コミックDAYS」で連載中の漫画『波うららかに、めおと日和』(西香はち/講談社)です。同作は、昭和初期の時代に帝国海軍中尉・江端瀧昌とその妻、なつ美が“夫婦(めおと)”になってからの日々を描くラブストーリー。冒頭の式で写真だった新郎こそが、海軍士官の瀧昌です。

 なつ美の父が瀧昌との縁談をまとめ、見合いする間もなく1週間後に結婚式、という昭和版の超スピード婚をしたふたり。しかも、瀧昌は式の前日に急きょ2週間の訓練に出てしまったため「写真」で結婚式に臨むことになり、瀧昌となつ美は実際に顔を合わせないまま、夫婦生活がスタートしたのです。

波うららかに、めおと日和

波うららかに、めおと日和

波うららかに、めおと日和

 この作品の見どころのひとつは、作者の西香はち先生自ら集めた昭和戦前文化や帝国海軍の資料を作品に活かしている点にあります。たとえば、海軍の仕事はすべて軍事機密のため、艦の出港日も入港日も家族に教えられず、外洋に出れば何カ月も帰ってこないのが“当たり前”。瀧昌も、なつ美と数日間の新婚生活を過ごした後、4カ月以上もの外洋に出てしまいました。

 そのほかにも、海軍の波止場で、仕事中の士官に恋人や馴染みの芸者が面会に行くときは、士官の「妹」を名乗るという暗黙のルールなど興味深い“海軍士官あるある”も多数盛り込まれています。

 ちなみに、西香先生自身は大の“制服軍服フェチ”。前作『花と紺青 防大男子に恋しました。』(講談社)では、制服フェチの女子高生・北山葉月と防衛大学校に通う学生・高宮凌のラブコメディを手掛け、全4巻すべての表紙に凌の制服姿が描かれました。

 この『波うららかに、めおと日和』でも、西香先生のこだわりが炸裂。第1巻の表紙では、文金高島田を結い、黒振袖を着たなつ美の横には黒い軍服を着た瀧昌が恥ずかしそうに座っています。海軍といえば白い軍服を思い浮かべがちですが、西香先生たっての希望で、実際に着られていた“黒地に金のラインの礼服”を瀧昌に着せたそうです。

 そして何より、本編で叶わなかった“ふたり並んでの結婚式”が表紙で実現しているのもニクい演出ですね。

 昭和戦前文化を気軽に楽しめるだけでなく、瀧昌となつ美の“うぶすぎる新婚生活”も同作の魅力です。

波うららかに、めおと日和

波うららかに、めおと日和

波うららかに、めおと日和

波うららかに、めおと日和

 江端家に嫁いだなつ美は、新婚初夜に何をするのかも知らず、おっちょこちょいなところもありますが、そこがまた愛らしい女性。一方の瀧昌は女性に慣れておらずかなりの奥手……のため、夫婦ながらゆっくりと関係を深めていきます。

 妻との優しい日々とは裏腹に、瀧昌が身を置くのは危険な世界。なつ美と陸にいるあいだだけでも、心穏やかに過ごしてほしい……と祈らずにはいられませんでした。

 うぶなふたりに萌えたい人はもちろん、昭和戦前文化や軍服に興味がある人にもおすすめの作品です。

文=とみたまゆり

あわせて読みたい