台所でシャワー。サンマは4人で1匹。生活保護世帯の子どもとして生きた女子高生はどうやって自立したのか

マンガ

公開日:2024/10/4

東京のど真ん中で、生活保護JKだった話

東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』(五十嵐タネコ/KADOKAWA)は、高校生時代に生活保護を受けていた作者の体験記である。本作では、生活保護世帯として生きていく現実の厳しさと、社会制度のありようがリアルに描かれている。

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 主人公のタネコは、東京都内のS区で育った女子高生。家族は父、母、兄の4人家族で、父が脳梗塞で倒れたことをきっかけに生活が一変してしまう。

 父には後遺症が残り、仕事を退職。母は統合失調症を患い、兄は母の過干渉から心を病んで引きこもりに。そんな家族の中で、自立を目指して奮闘するのがタネコだ。彼女がアルバイトやボランティア経験を通じて、自分の力で未来を切り開こうとする姿は実に凛々しい。

 生活保護世帯からの自立。それは、生活保護を受けていない家庭にいる子どもが自立を目指すよりも格段に険しく、狭き門なのだろう。選択肢の少なさと、つまずいたら二度とチャンスはないかもしれないというプレッシャー。そして、家族関係からくるストレス。そんなギリギリの環境の中にいながら、「なんとしてでも自立してやる」という執念に似た想いが、タネコに自立への最短距離を選ばせていく。

 この作品の見どころは、そんなタネコの成長と努力、そして選択にある。

 とくに印象的なのは、タネコがボランティア活動の中でキャンプ体験や友人との交流を謳歌するエピソードだ。ボランティアとして活動すると金券カードをもらえたり、格安でキャンプに参加できたりする。タネコはそれらの活動を通して、地域の大人たちと関わり、知らず知らずのうちに他者に頼ることを覚え、視野を広げていった。

 結果的に、そこで知り合った区役所職員に背中を押してもらい、タネコは実家からの自立を果たす。彼女が自分の力だけでなく、社会制度や、他者の力を借りながら未来を切り開こうとする姿勢には、目を見張るものがある。また、人の縁が繋いでくれるチャンスへの可能性や影響力の大きさを、強く感じずにはいられない。

『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』は、誰でも生活困窮に陥る可能性があり、もしそうなったとしても、立ち直る術があることを教えてくれる。しかし、困窮から脱却するためには、とてつもないストレスがかかることも…。必要な時に必要な支援が届く制度の充実や、誰もが必要最低限の生活を不安なく過ごせる未来がくることを、願ってやまない。

文=ネゴト / ニャム

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