中日も落合博満も、異世界転生マンガは公式公認! ドラゴンズファンが見た“現役時代の元ネタ”を解説『落合博満のオレ流転生』
PR 公開日:2024/9/20
「転生もの」、マンガ好きであれば一度はこのジャンルの作品を読んだことがあると思う。平たく言えば、主人公が何かしらの理由で亡くなり、異世界で別の何かに生まれ変わって、人生をやり直す物語だ。
「転スラ」こと『転生したらスライムだった件』に代表されるように、平凡な主人公が転生し、とんでもない強力なキャラクターになっている、というのが定番だ。現在進行形で作品数は増え続けており、栄華を極めているとも言えるが、食傷気味である感も否めない。そんなジャンルに、新風を吹かせる一作が誕生した。それこそが本作『落合博満のオレ流転生』(宮川サトシ:原作、川:漫画/講談社)である。
「プロ野球選手として三度の三冠王を獲得し、中日ドラゴンズの監督としてもチームを四度のリーグ優勝&一度の日本シリーズ優勝に導いた落合博満が、現役時代の肉体に戻りファンタジー世界に転生した。そして野球で培った技術や経験を駆使して、魔物たちと戦い始める…」というのが大まかなストーリーである。転生し、若返った落合は、その世界の住人から「オチ」と呼ばれ信望を集めるのだが。そう、このマンガは、落合博満本人やプロ野球球団などから許諾をもらい、「存命中の実在人物が転生」という荒業を成立させているのだ。う~ん画期的。
プロ野球に明るくない人からしたら「それで面白くなるの?」と思われるかもしれないが、そもそも落合博満という人間がマンガのキャラクターのような人物なので、その点は心配御無用である。例えば、現役時代の落合はある日のバッティング練習の際、近づき過ぎたTV局のカメラマンに「危ないからどけ、じゃないとそこに当てるぞ」と警告し、どかなかったので本当に一球目で打球をカメラに直撃させ、レンズを破壊したことがある。
上記のエピソードを基に、作中では「オチが魔法で放たれた火の球を棒切れのスイングで弾き返し、敵(の肩に乗っていた毒蛇)に当てる」というシーンが描かれる。その後、力を使い果たしたオチは、握った手を棒切れから離せなくなるのだが。これも「落合が打撃練習で力を出し切ってしまい、自力でバットから手を離せなかった」という実話を参考にしていると思われる。本作ではこういう話が延々続くのである。プロ野球ファンからしたら、ニヤリとほくそ笑んでしまうこと請け合いだ。
ただし、本作序盤では、選手時代の落合が残したエピソードしか出てこない。筆者は「月刊ドラゴンズ」で連載を持つほどの熱狂的な中日ドラゴンズファンなのだが、そういう人間からすると「監督・落合博満」が残した伝説の数々が、今後作中でどう料理されるかが楽しみでならない。「日本シリーズで完全試合を続けていた山井大介を9回に交代した」、「森野将彦が失神寸前になるまで落合監督自らノックを浴びせ続けた」、監督時代のエピソードとしてはこの辺りが有名である。
個人的には、「審判の体調不良を落合監督だけが見抜き早退を促した(その後実際に交代)」、この逸話が大好きなので、今後これらがどのようにオチの活躍に活かされていくのか? まずはこのコミックス第1巻を読みながら心待ちにしたいと思う。また、今後アニメ化されることがあるのならば、落合博満のご子息である落合福嗣にオチのCVを担当していただきたい次第である。
文=カルロス矢吹