正体不明の祠と事件現場に残される「N」の文字。伏線を解き明かすのが恐ろしくなるホラー漫画『N』をレビュー
更新日:2024/10/2
点と点が結び付いた瞬間、多くの人は心がスッと晴れやかになるだろう。その点が多ければ多いほど、線として結び付いていく快感は強くなっていく。伏線回収系の映画や漫画に魅了される要因はそこにあると言っても過言ではない。
ホラー作品『N』(くるあくむ:原作、にことがめ:作画/KADOKAWA)に関しては、点と点が結び付いていくのを見たくないとためらってしまう……。あちこちにちりばめられた点が、読み進めていくなかで意図せず引き寄せられていく感覚。数あるホラー漫画のなかでも、これほど伏線回収が嫌になる作品はないかもしれない。
物語のカギとなるのは、ある村の広大な霊園にポツンと置かれた祠(ほこら)と「N」という文字。第1話から第7話までで起きる男子学生行方不明事件や、小学校の1クラス・授業参観日惨殺事件、自動車暴走2名死亡事故、行方不明事件跡地での後追い自殺といったさまざまな事件には、必ず祠や「N」の文字が関係するのだ。現状、それぞれの事件の被害者同士に関連性は見られない、というより明かされていないといった方が正しい。きっと、伏線回収系の作品が好きな人は「実は、被害者たちには共通点があり、そのせいで死んでしまったのではないか」と考察するだろう。確かに作中で「N」は2000年前に崩壊したカルト系の宗教団体の1つだとされており、被害者たちは「N」に所属していた人々の末裔であったのではという考察は可能だ。
ただこの作品、僕はそのような話では済まないような気がする。詳細は実際に本書を確かめていただきたいので伏せるが、各話のなかで描かれる事件には、人間による犯罪として説明がつかない点がいくつも存在するのだ。行方不明事件は「神隠し」にあったように複数人が消えてしまうし、小学校の1クラス惨殺事件も当日は授業参観日だった。大勢の大人がいるなかで1クラス全員を惨殺するなど想像しにくい。ましてやそれだけ大きな事件であるにもかかわらず、被害にあったのは1クラスだけというのが奇妙でならない。そもそも祠と「N」にはどんな関係があるのか。謎は深まるばかりだ……。
他にも奇妙な点が書中にいくつもちりばめられている。まずは目次だ。第1話「A」、第2話「B」とタイトルにはアルファベットが振られているのだが、なぜか第6話だけ「G」が裏返り、そのタイトルだけ背景が黒いのだ。順当に進めば第6話は「F」であるはず。もしかすると、ここで描かれる内容が本作の重要なカギを握っているのかもしれないが、冒頭でも述べたように僕はあまり知りたくないというのが本音だ。
そして極めつきは、本書末尾に書かれたこの言葉。
“栞をはさまないでください 勝手に栞が入っていた場合は 黒くなる前に必ず取り出してください すべてが外に飛び出てしまうので”
幸いなことに、僕の本には栞は入っていなかった。もちろん今後も栞をはさむ気はない。一体何が飛び出すというのか……。
このままアルファベット通りに進んでいけば、第14話が「N」になる。第1巻では7話まで収録されている。「N」と祠、関連する事件の真相が知りたい人は、ぜひ本書を手にしていただきたい。
文=トヤカン
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