5年を経て連載再開、「りぼん」衝撃作『さよならミニスカート』。「このまんがに無関係な女子はいない」と銘打たれた物語
PR 更新日:2024/10/1
過去の傷害事件をきっかけにアイドルを引退し、その後別の街でひっそりと一人の女子高生として暮らす主人公の神山仁那。黒いストレートのロングヘアはばっさりと切られ、高校では女子の中で唯一のスラックス。握手会で見せていた笑顔も封印し、あらゆる過去を隠しながら生活している。そんな彼女を通して見た、「女の子」をとりまく偏見や差別、暴力性などを描いた作品『さよならミニスカート』(牧野あおい/集英社)は、その内容はもちろん、掲載されたのが少女漫画誌「りぼん」ということも含めて連載開始当初大きな話題を呼んだ。
その後、著者牧野あおい氏の体調不良により休載となり、今年4月に5年ぶりに連載が再開。9月に最新刊の3巻が発売された。心待ちにしていたファンもたくさんいただろう。
休載前、仁那と、彼女の理解者である同級生の光は、同じくクラスメイトの長栖さんとのトラブルを巡り、大きな壁にぶつかっていた。仁那にとって、長栖さんは過去の自分の姿を彷彿とさせるような少女で、世界を利用して奪う側に立っていると思っている。しかし、実際はその社会に消費され、奪われているということに気づいていない。仁那はそんな長栖さんを放っておくことができない。そして、仁那が密かに想いを寄せていた光も、自分の過ちから長栖さんを拒むことができず、半ば無理やりのキスを受け入れてしまう。
続く第3巻では、静かに亀裂が入った仁那と光が、それぞれに自分の想いと向き合い、決断を迫られる展開となっている。
正直、読んでいて長栖さんに苛立つ読者も多いのではないか。自分もそうだった。常に男性の味方であるような発言をして、女の子が晒されている差別意識を助長する。彼女がいるから、問題が停滞したり、むしろ悪化したりしていると感じてしまう。
しかし、彼女も立派な被害者なのである。それが、第3巻が私たちに突きつけてくる事実だ。なぜ、彼女はこうも強がってしまうのか。なぜ彼女は自分が受けたひどい行為をひた隠しにしてでも己を曲げないのか。読み進めていくうちに、長栖さんの脆くて弱い部分が浮き彫りになっていく。
その他にも、光の妹が受けた過去のセクハラ事件や、仁那のアイドルに対する想いなど、これまで大きくは明かされなかった部分も少しずつ見えてきて、よりドキドキする展開となっている。また、衝突しながらも距離を縮めていく仁那と光の2人の姿は微笑ましく、心安らぐ瞬間である。一方で仁那を傷つけた犯人はいまだ捕まらず、新たに長栖さんにも目をつけるなど、ストーリーはより加速していく。
現代の社会に鋭く切り込むメッセージ性を、サスペンス要素やドラマチックな展開の中で活かしながら描いているのは、さすがとしか言いようがない。この作品が連載された当初、りぼん編集部がXで投稿した「このまんがに無関心な女子はいても、無関係な女子はいない」という言葉が大きな話題となったが、そんな無関心な女子でも気が付けば面白く読んでいて、知らず知らずのうちに胸に刺さってしまっている、そんな強度のある作品だと感じた。無関心を装って傷だらけになっている長栖さんのような女の子が、ひとりでも減るきっかけとなる作品として、たくさんの人に届いてほしい。
文=園田もなか