ツッコミとは最終防衛ライン/ツッコミのお作法③

小説・エッセイ

公開日:2024/10/28

「人を傷つけない笑い」はない?

誰かが倫理的にちょっとどうかと思われるようなことをボケとして言ったとき、テレビだったらカットされて人目に触れずに終わりますが、ライブでは“なかったこと”にはできません。

そこでどうツッコむかはその発言の度合いによって変わってくるのかなと思います。あまりにも不謹慎でなんの笑いも起きないような場合は無言で強めに頭を叩いたりします。これはもうツッコミというよりかは説教に近いかもしれません。叩かれるという罰を最速で受けることによって、その場にいる人たちの溜飲を少しでも下げてもらうのが目的です。

このように何か間違っていたり「おや?」と思われるようなボケがあったりしたときに、訂正しなければならないという意味でツッコミは最終防衛ラインとしての役割もあります。その場にいる全員を守るためにも、常に価値観をアップデートし続けることが必要だと思っています。

とはいえ、何をもって「間違っている」とするのか、どこに基準を合わせるのかという難しさもあります。正直言って、「人を傷つけない笑い」はないと思っています。例えば犬がテーマのほっこりしたコントがあったとき、大半の人は「ハートウォーミングで面白いね」となったとしても、犬に怪我をさせられた過去のある人はあまりいい気持ちはしないはず。

いろんな人がいるから、結果として誰かが傷ついてしまうのはどうしようもありません。だけど「傷つけにいかない笑い」は可能なはず。なので僕はできるだけ引っかかる人を減らす〈フォロー添えツッコミ〉を要所要所ですることによって見る人のストレスを軽減するよう心がけています。「だからたまにツッコミが長いときあるんだ」と思われた方もいるかもしれませんが、ややこしいのが「単にいいツッコミが思い浮かばなくてダラダラ喋っている」というケースもあるのでタチが悪いですよね。

■ツッコミ例
「いや高級レストランにそんな服で行くなよ!リーズナブルで素敵なブランドではあるけど!」

■ツッコミ名称
フォロー添えツッコミ

■解説
観ている人から「おや?」と思われそうなボケに対して、訂正するのもツッコミの役割。場合によっては、相手が求めているであろうツッコミを提供した後、見え方を変えるためのフォローの言葉を足すのも一つの手。

トンツカタン森本晋太郎

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森本晋太郎(もりもと・しんたろう)/1990年、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。