ツッコミとは最終防衛ライン/ツッコミのお作法③

小説・エッセイ

公開日:2024/10/28

上司の頭を叩くわけにはいかない…一般社会で使える技

ただ、一般社会で問題発言をした人の頭を叩いたらむしろそっちの方が問題ですよね。なんなら叩かれた方が「ありがとう」と言ったりするお笑い界は相当特殊です。しかも、芸人の場合は基本がお笑いをやっているのでたまに真面目に切り返しても「線引きがはっきりしてる人」扱いで済みますが、それ以外だと「ノリが悪い」とみなされてしまうケースもきっとあるんじゃないでしょうか。

そういう同調圧力みたいなものと戦うのってすごく難しいと思います。僕は表に立つ人間だからという理由でなんとか自分のポリシーを持てていますが、そうじゃなかったら飲み込まれてしまう側だという自覚があります。

頭を叩く以外で、そういう場面で僕がたまに使うのが、先ほども紹介した〈フォロー添えツッコミ〉です。「この人はこういうツッコミが欲しいんだろうけど、そのやりとりは一般的にはあんまり良くないかもな」と思うとき、まずは相手が欲しいであろうツッコミを提供して、その後に「でもこういう意見もありますからね」と付け足す。フォローの材料を加えることで、お互いその違和感をわかった上でやりとりしているんだよと思ってもらうことができます。

普段の会話ではそこまで必要ではないかもしれませんが、相手の話に全部は乗っかりたくないときなどに使ってみるのはどうでしょうか。ただ、多用しすぎると芯のない人間に思われてしまうので要注意です。まあ芯のない人間ってのも柔軟で良いですけどね。

トンツカタン森本晋太郎

(取材・文/斎藤岬)

<第4回に続く>

あわせて読みたい

森本晋太郎(もりもと・しんたろう)/1990年、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。