「自分の親に読んでほしかった」世界46カ国で200万部を売り上げた、子どもとの向きあい方の根本がわかる1冊

文芸・カルチャー

更新日:2024/10/2

子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本
子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー:著、高山真由美:訳/日本経済新聞出版)

 現在8歳と5歳の男児を子育て中の私。子どもがいいことをしたときも、悪いことをしたときも、癇癪を起したときも、「どう対応するのがいいのか?」「さっきの私の対応は間違っていたのでは?」と悩む日々を送っています。

「育児に正解はない」とわかってはいるものの、日々自分の対応が子どもに悪影響を与えていないか気になる……。そんな時にSNSで見かけたのが『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー:著、高山真由美:訳/日本経済新聞出版)です。

 本書は世界46カ国で200万部を売り上げたベストセラー。自身の子ども時代における親との関係を見つめ直すことで、現在の自分と子どもとの関係をよいものにしていくという内容の一冊です。英国の心理療法士が、さまざまな親子の実例をもとに子どもが幸せになるための親の心の持ち方、声掛けの例などを挙げています。

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自分が取ってしまった行動を、過去を振り返ることでひもとく

 まず本書が伝えるのは、「自分が子育て中にとる行動は、親が自分に対してとった行動に強く影響されている」ということです。子どもに対してはその存在を肯定し、無償の愛を注ぎたいと多くの親が思っているはず。しかし実際は些末なことにイライラしたり、後になって反省したりすることが多々あるのも多くの親が共感する出来事だと思います。

 ではなぜ、その時自分はかっとなってしまったのか? その理由はかつて同じようなことで怒られたり、または自分もそうしたかったのにそうさせてもらえなかったりというような、子ども時代の記憶が関係していると本書は伝えます。

子どもの感情の受け皿となるべし

 もう一つ印象に残ったのが、第3章「感情に向きあう」です。本章では子どもの感情に対して、否定したり過剰に反応したりするのではなく、あるがままを受け入れる受け皿になるべきだと説きます。例えば子どもが「車のお気に入りの席にいとこが先に座ってしまった」と泣き始めたとき、あなたならどうしますか?

 我が家の長男は幼児期にこの手の癇癪がひどく、しょっちゅう泣きわめいていました。私はだいたい「ここはあなたの席ではなく、早い者勝ちだよ。次また車に乗るときに乗ればいいでしょ」といった風に正論で制圧を試み、ほぼ失敗していました。本書によると、そんな時はまず寄り添うこと。「困ったね、あの席に座りたいんだね」と共感を示した上で「今はどこに座りたい?」と選択できる状況にすると、子どもは気持ちを切り替えて他の席に座ることができたと例を挙げます。

 実際、知っていてもその場で常に大らかな対応が私にできたかと言われれば自信がない上、そう毎回上手くはいかないのが子育てとも思います。しかし自分に置き換えてみると、泣いているのにその感情を否定されたらいやな気持ちになるのも事実。「真剣に受け止めすぎるのもよくないのでは?」とも悩んでいたのですが、「正面から受け止めすぎず、しかし否定・無視はしない」という本書の提示はすごく腑に落ちるものがありました。

 このように私自身読んで反省することもしばしばでしたが、本書は自分の行動を把握し修正することはいつからでも遅くないと説きます。たとえ子どもが成人してからでも、自分がどこで間違えたか話す修復の働きかけは重要な意味を持つとのことです。

 さらに本書は時折理解を深めるための「やってみよう」と題した練習問題が。気になる場面の練習問題をやってみることで、自分の内面を深掘りし、子どもと向きあうときのヒントを得ることができます。

 子育てに悩んだとき、子どもとの関係をよりよいものにしたいと考えたとき、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

文=原智香

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