『キャプテン翼』高橋陽一「良いシュートが描けるとゴールさせたい」。ネーム連載の最新シリーズで22歳の大空翼が“W杯優勝”を掴むまでの構想とは【インタビュー】

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更新日:2024/12/8

高橋陽一さん

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 1981年に連載を開始したサッカー漫画『キャプテン翼』(高橋陽一/集英社)。2024年4月に大空翼率いるU-23日本代表がマドリッド五輪に挑む『キャプテン翼 ライジングサン』が最終回を迎えた。物語はマドリッド五輪準決勝、日本対スペインの後半途中で幕を閉じた。

 そして今年7月、WEBサイト「キャプテン翼WORLD」にて前代未聞の“ネーム連載” という形で『ライジングサン』の続編『キャプテン翼 ライジングサンFINALS』がスタート。

 本記事では作者・高橋陽一さんにインタビューを実施。ネーム連載に至った経緯と、これから描かれる物語の構想を伺った。

 第1シリーズの連載開始から43年、最新話時点での大空翼の年齢は22歳だ。選手としてまだまだ成長期真っただ中の翼は、これからどんな戦いを繰り広げて「日本のW杯優勝」という夢に近づいていくのだろうか。

良いシュートが描けるとゴールさせたくなる

――2018年のインタビューでは「ドイツ戦、準決勝と決勝の3試合は最後まで描くと決めて取り組んでいる」と仰っていましたが、結果として準決勝の後半途中でネーム連載に切り替わることになりました。

高橋:準決勝までが想定よりも長くなってしまって。今の自分の年齢を考えたとき、もしかしたら最後まで描けないかもしれないと思ったんです。

――なぜ想定以上に長くなったのでしょうか?

高橋:(日本対ドイツ戦前の)ブラジル対ドイツ戦は翼たちが出ない試合なので、本当はもう少し短くまとめるつもりだったんです。でも各国のライバルたちが本当に魅力的で、描いていて楽しくなってしまって(笑)。予定外のシーンをどんどん追加していたら、終わらなくなってしまいました。

――過去のインタビューでも「描いていくなかで試合結果が最初の構想と変わることもある」とおっしゃっていました。『ライジングサン』のなかで、構想から変わった試合はありますか?

高橋:結果は変わっていないですね。ただ、同じ引き分けでも、3-3にしようと思ってたのが4-4、5-5になったことはありました。

――どういった流れで構想以上に得点が入るのか気になります。

高橋:『ドカベン』の水島新司先生が言ってたんですけど、本当はホームランにする予定はなかったんだけど、山田太郎のすごく良いスイングが描けたので「これは絶対ホームランだろう」って、変えちゃうという(笑)。

高橋陽一さん

――絵というか、キャラクターに引っ張られるような。

高橋:それに近い感覚だと思います。良いシュート場面が描けると「これは入らないとおかしいだろう」と。そういったことが続くと話数が増えて、なかなか試合が進まないんです。

――そうして話数が想定より増えている間も、今後の構想がどんどん膨らんでいくわけですよね?

高橋:そうですね。だから、先が描きたいのになかなか進まないという、もどかしさがずっとありました。

――ネーム連載に切り替えるにあたり、文字プロットを残していくという選択肢もあったのかと思うのですが、文字のみだと「かっこいいシュートを描けたからゴールにする」といった展開はきっと生まれないですよね。

高橋:おっしゃる通りだと思います。僕は、映像をイメージしながら漫画を描くタイプなので、言葉でその感覚を表すのはめちゃくちゃ難しいと思うんです。もう絵を描いちゃったほうが早いので、ネーム連載という形になりました。

――映像をイメージするというのは、脳内で選手たちを動かしているような感じですか?

高橋:脳内というよりも、白い画用紙に向かったときにサッカーフィールドが浮かび上がってくるみたいな感覚ですかね。

――それは試合全体を俯瞰する感覚ですか? それとも漫画のコマごとにシーンが浮かび上がるのか。

高橋:両方ですね。スコアも考えて俯瞰しながら「ゴール前での戦いの最中、DFの選手たちは何をしているのかな」「日向はこの辺でカウンター狙ってるな」みたいなことは常に考えています。時には選手の間近でシーンに入りこんで描くことも、もちろんあります。

連載できなくなっても物語を残したい

――作画に時間がかかることもネーム連載に切り替えた理由に挙げていましたが、これまではネームと作画、どういった時間配分だったのでしょうか?

高橋:ネーム自体は、構想が頭の中で固まっていれば1日で1話分ぐらいですかね。作画は下絵に1日ちょっとかかって、ペン入れは1日8ページがやっと、という感じです。昔は1日10ページ以上描けたんですけどね。

 スピード線とか、スパイクの描き分けとか、細かいところも全部自分で描くというスタイルでずっとやってきちゃったので、どうしても時間かかってしまうんです。

――アシスタントの割合を増やして通常の連載を続けるといった考えはなかったのでしょうか?

高橋:もっと若い頃にそうしておけばよかったんですけどね。ここまで突きとおしてきちゃったので、今さら誰かにお願いするのも……という気持ちはあります。

――このネーム連載が世に出る際、読者からどんな反響があるのか不安はありましたか?

高橋:ストーリーとしては伝わるとは思うのですが、連載という形がうまくいくのかという不安は今でもすごくあります。ただ、自分自身のネームで『キャプテン翼』を続けていこうと決めたので、仕事にできなくなったとしてもライフワークとして続けていこうと。

――仮に連載の場所がなくなっても、ネームは描き続ける?

高橋:そうですね。とにかく『キャプテン翼』の物語だけは残しておきたいんです。そうすれば、誰かが改めて漫画にしてもいいですし、AIが描いても別に構いません。僕が生きている間はちょっとやめてほしいですが、それ以降はお好きにしていただければと思っています(笑)。

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