心霊現象だと思っていたけど人為的なものだった!? 建築デザイナーが教える「住んではいけない場所」とは?
更新日:2024/10/17
人生の節目で多くの人が経験する引っ越しや物件探し。新生活への期待に胸を膨らませて入居したものの、何かおかしいと感じた経験はないだろうか。『その物件、告知事項アリ 建築デザイナーが明かす怖い部屋』(宮本ぐみ:作画、宮本ぺるみ:原作/竹書房)は、建築デザイナーの視点から、そんな部屋に住んでしまった人たちを襲う世にも恐ろしい出来事をまとめたコミックエッセイだ。
告知事項とは、過去に自殺や殺人事件が起きたり、周辺環境が不快感や嫌悪感を与えるような状況にあるなど、「物件の重大な瑕疵や事実」のことを指す。夫の自殺によりマンションが事故物件となり、多額の損害金を支払う経験を持つ著者が、建築デザイナーとして仕事をする中で出会った、告知事項あり物件に住む人々を襲う超常現象や不可解な出来事を、リアリティたっぷりに描く。
本作はテンポの良さと読みやすさが魅力で、ホラー的な要素が多いにもかかわらず、親しみやすい絵柄と、著者含め個性豊かなキャラクターのおかげでどんどん物語に引き込まれる。同時に、「瑕疵物件」といった専門用語や、物件に関する法的な側面など、不動産取引に関する実用的な知識も自然に学べる。
入居後に続く霊的現象と思われた出来事が、実は人為的なものだった!? という展開や、幽霊の存在をビジネスチャンスと捉える店主の姿など、さまざまな視点から「告知事項あり」物件を描いている。これにより、単なる怖い話以上の深みのある内容を楽しむことができる。
一方で、「住んではいけない場所」の存在について強く訴えている。人が寄り付かない場所や、何をしても上手くいかない場所など、物理的な問題だけでなく、土地や環境が持つ目に見えない影響力について考えさせられる。
恐怖を味わいながらも、家や土地を選ぶ際の重要な視点を学ぶことができる本作。こういったことが多発しては困ってしまうが、読み終わるともっと読みたいと思わせる魅力が詰まった作品である。
文=ネゴト / Ato Hiromi
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