介護施設の利用者を自宅に送り届けると「早すぎる」と家族からキレられてしまい…。シニア介護ドライバーがみたリアルな介護の世界

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公開日:2024/10/15

シニア介護ドライバーが語るココだけの話

 超高齢化社会である現代において、介護業界では人手不足が深刻になっている。『シニア介護ドライバーが語るココだけの話』(東條さち子/竹書房)は、そんな介護業界の中でもドライバーの業務にスポットをあてた物語だ。

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 漫画家・東條さち子さんの夫は、元々タクシードライバーだった。しかし24時間乗車、24時間休みという激務に疲れ、退職することに。そして本人の希望により、朝夕に1~2時間ずつのシフトで週に数回勤務する、シニア介護ドライバーとして働くことになる。

 東條さんの夫が勤める介護施設は、比較的要介護度の低い人が利用する場所だった。「デイサービス」や「ショートステイ」の利用者さんたちを送り迎えするのがドライバーの仕事だ。本作では、シニア介護ドライバーの仕事を通して、思わず目を背けたくなるような介護現場の「リアル」が垣間見える。

 介護施設は、高齢の利用者さんはもちろん、そのご家族にも対応を迫られる。介護が必要な利用者さんに対して「とにかく家にいてほしくない」と感じるご家族がいると、送迎が5~10分ずれるだけでクレームを言われてしまうという。クレーム回避のため、送り迎えの順番を常に考えなければいけないのだから、介護ドライバーの仕事は大変だ。

 本作で紹介されている中で何より辛いのが、介護ドライバーは利用者さんやそのご家族のご遺体に遭遇する可能性があるというエピソードだ。単身で暮らしている利用者さんの認知症が急速に進むと、生活できなくなり孤独死することもある。連絡がつかず家を訪れると、亡くなって数日経っていた…というケースも少なくないらしい。東條さんの夫は認知症の利用者さんの息子さんが自死している姿を見つけ、実際に第一発見者になっていた。

 本作では、こうした介護業界の現実をまざまざと知ることができる。身近に要介護の家族がいないと知らないことばかりだが、きっと誰にでもいつかは訪れる現実なのだと突きつけられる。きれいごとだけではない「介護のリアル」を知るためにも、ぜひ本作を手にとってもらいたい。

文=ネゴト / 押入れの人

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