「ラストの表現がかなりの衝撃だった」月100冊以上のマンガを読む、マンガライター・ちゃんめいさんが台湾マンガ『守娘』『葬送のコンチェルト』をおすすめする理由【インタビュー】
PR 公開日:2024/10/2
――日本のマンガを、海外の人たちはどう読むんだろう、と不思議に思うこともあるのですが、きっとこんなふうに感情移入してくれているんだろうな、と体感できたのもおもしろかったですね。
ちゃんめい:以前、日本の学園マンガを愛読している海外読者の方に取材をしたことがありまして。自分たちの通う高校とは違うシステムで青春する人たちの話を、どんなふうにおもしろがっているのだろう、と私も少し不思議だったんですが、異なる文化が描かれるなかでときどき現れる「これはわかる」という感情をたぐりよせて、「おもしろい」や「好き」を育てているらしい、と取材を通じて知りました。わからないからおもしろがれない、なんてことはなくて、きっと誰もが小さな共通点を集めながら物語に寄り添い、楽しむことができるのだと思います。
――ちゃんめいさんが『葬送のコンチェルト』で見つけた「これはわかる」はありますか?
ちゃんめい:「夢を追うのは生きる者の特権だ」というセリフがあるんですけれど、それはさまざまなかたちで死が描かれてきたからこそ重みをもつ言葉で、日本人だけでなく、生きている人ならば誰でも「わかる」って思うんじゃないかなと思います。あと、「西洋では伝統的に霊魂が重視されるが東洋人は遺体に重きを置くことが多い」というセリフがあって。同じ東洋という点で、日本人はわりと読んでいてなじみやすい描かれ方がしているんじゃないでしょうか。
――たしかに。違いすぎない、というのは読みやすさのひとつでしたね。
ちゃんめい:第2話に闘病中の女の子を通じて描かれる、最期の瞬間までどう生きるのかという想いや、受け入れがたい死に直面したときに、それでも生きている人たちが前を向くためにさまざまな儀式があるのであろうことや、生と死を通じて感じ入ることがさまざまありました。最近、ドラマ化されて話題になった『Shrink〜精神科医ヨワイ〜』(七海仁:原作、月子:漫画/集英社)は、人が誰でも抱える心の影を丁寧に掬いあげながら、いかに営みを紡いでいくかを描いたマンガですけれど、『葬送のコンチェルト』にも通じるテーマがある気がします。一方で、ちょっとした描写に、日本とはまた違う信仰の深さを感じたのも事実なんですけれど。
――たとえばどんなところに?
ちゃんめい:祭壇の豪華さとか、本当に些細な描写なのですが、日本との違いを探してみるのもおもしろいと思います。私の友人が台湾の方と結婚して現地に住んでいるんですけれど、物件を探すときに、お廟が近いかどうかのチェック項目があると聞いたことがあって。新年の爆竹は有名ですが、それ以外にもお廟で祀られている神さまが生まれた日には、たくさんの人が集まって大騒ぎするらしく、最近の若者は、お廟から遠い物件を選びがちらしいです。