年末の大掃除やおせち料理をやめてみたら――四季を自分らしく楽しむ方法を、引田かおりさんの新刊『日々更新。』に学ぶ

文芸・カルチャー

更新日:2024/10/15

日々更新。/
日々更新。』(引田かおり/ポプラ社)

 自分を大切にする方法は、四季を存分に肌で感じてみること――。引田かおりさんの新刊『日々更新。』(ポプラ社)が、2024年10月9日(水)に発売された。同作は、何かと暗い世の中を幸せに生きるためのヒントを綴った一冊だ。

 著者の引田さんは2003年より東京・吉祥寺で「ギャラリーフェブ」とパン屋「ダンディゾン」を営みつつ、さまざまなジャンルの作家と交流して得た「美味しい」と「素敵」を世間に発信。2021年に『「どっちでもいい」をやめてみる』、2023年に『たぶん だいじょうぶ』といった著作を執筆し、幅広い世代から支持を集めている。

 そんな引田さんが今回『日々更新。』で提案するのは、「『こうしなきゃ』をどんどん手放す」という生き方。日本には四季があり、それぞれに行事が存在する。例えば2月の節分では豆まきを行い、歳の分だけ豆を食べる。

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 そして恵方巻を用意して、干支に応じた方位を向きながら黙々と食べ切らなければならない。そうした風習は無病息災や幸福を祈ると同時に楽しむものだったが、しっかり守らないと「バチが当たらないだろうか」と畏れが先立っていたと引田さんは語る。

 そこで引田さんは、娘夫婦が自分たちに合うスタイルで行事を楽しむ様子を見て年末の大掃除やおせち料理の準備といった決まり事をやめたという。そのかわりに玄関には季節に添う好きな作家の額装の作品を飾ったり、クリスマスには飾り付けを楽しんだりと、「こうしなきゃ」という思い込みをどんどん手放して「こうしたい」を大切にするようにしていった。

 つまり行事に囚われるのではなく、自分たちの思うままに四季を味わう。そんな“暮らしを楽しむ”生き方を引田さんは提案している。確かに、季節の決まり事を半ば強制的に行うよりも、固定観念に囚われず自由にエンジョイできた方がよほど生産的かもしれない。

 その具体例として『日々更新。』では、心を軽くしてくれる文章に加えて四季ごとにオススメのレシピやフラワーアレンジメントを写真付きで紹介。例えば料理研究家・西本かがり氏に教わったという「稲荷ずし」の作り方や、吉祥寺で花屋「hibi」を営む久野恭子氏に伝授された「球根花」の生け方などが解説されている。

 ほかにもオススメの日用品やシーズンごとのファッションなど、実用的かつ暮らしの楽しみ方を広げるヒントが満載。もちろん「自分らしさ」は人それぞれだが、引田さんのように食、花、服で四季を感じる生き方は人生の幸せを見つける手がかりになるはずだ。

 何かと日常に息苦しさを感じる人は、ぜひ『日々更新。』を手にとってキラキラした毎日を取り戻すきっかけにしてみてはいかがだろうか。

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