原作は600万超DLの大ヒットゲーム。少女との約束を果たすため、記憶を失った少年が隠された真実をたどり始める
公開日:2024/10/23
あなたには、時間を飛び越えてでも再会したい人はいるだろうか。もう一度、話をしたい人や声をかけたい人はいるだろうか。
『7年後で待ってる』(あるた梨沙:漫画、Fumi:原作/KADOKAWA)は、記憶を失った主人公が、少女とのかつての約束を果たすために記憶を取り戻そうとする物語。600万超DLの大ヒットゲームを原作としたコミカライズで、緻密なストーリーと心揺さぶるキャラクター描写が魅力の作品だ。謎解きや人間ドラマを楽しみたい人、心温まるストーリーが好きな人に、ぜひとも手にとっていただきたい。
7年前から以前の記憶を失っている、主人公のハルト。記憶がないなかで、謎の少女との「7年後で待ってる」という約束だけは覚えていた。
「なにか…大切なものを思い出せる気がするから」
少女との約束の日が迫り、故郷に戻ったハルトは、約束の場所を探し始める。
ハルトと読者の前には、物語が進むにつれ多くの謎が立ちはだかる。本作最大の魅力は、それらの謎にまつわる緻密に張り巡らされた伏線と、その回収の巧みさにある。
約束を交わした少女は誰だったのか?
ハルトが過ごしていたという病院に隠された秘密は、なんなのか?
そもそも、なぜハルトは記憶を失ってしまったのか?
地層のように積み重なった謎が少しずつ氷解するごとに、そういうことだったのか!と驚きながら、読者はさらにこの世界へのめりこんでいく。気がつけば、物語の虜になっているのだ。
キャラクターたちの描写も秀逸だ。ゲームのドット絵表現とは異なる、マンガだからこその表情の変化。このキャラクターは何を考えているのだろう…実は裏があるのではないか?と疑いつつ、ついつい深読みしてしまう。そして彼らの言動に隠された真実が明らかになるたび、深く感情移入してしまうのだ。
友情や家族愛など、好きな関係性を見つけるのも本作の楽しみであろう。中でも注目したいのは、ハルトと約束の少女との関係。お互いを想い、信じ合えるふたりに、私は心を強く掴まれた。
『7年後で待ってる』は、過去と現在をつなぐ感動の物語。隠された謎を追いかけているうちに、ハルトと約束の少女との幸せを願わずにいられなくなる。この物語がたどり着く結末に、あなたもきっと感動するはずだ。