月9ドラマ原作。「私の耳にはウソが聞こえます」迫害され、村を出た少女と貧乏探偵がおくるレトロミステリー『嘘解きレトリック』の魅力
更新日:2024/10/7
2012~2018年に白泉社の雑誌『別冊花とゆめ』で連載されていた傑作レトロミステリー『嘘解きレトリック』(都戸利津/白泉社)が、あの『ガリレオ』スタッフによって実写ドラマ化! 2024年10月7日夜9時から、フジテレビ系列で放送がスタート。主演を務めるのは今をときめく俳優の鈴鹿央士さんと松本穂香さんだ。
おふたりが演じるのは、ダメ人間の探偵・祝 左右馬(いわいそうま)と、嘘を見抜ける少女・浦部 鹿乃子(うらべかのこ)。昭和初年を舞台に、鹿乃子と左右馬の謎解きが繰り広げられる。
嘘を見抜けてしまうことで、家族ごと迫害に遭ってきた鹿乃子。嘘を見抜けるのはとても素晴らしい能力なのだが、嘘の裏にある真実は時として人を傷つける刃物にもなってしまうのだ。この能力でこれ以上人を傷つけないため、鹿乃子はひとり立ちすることを決意し、旅に出る。
そうして九十九夜町までやって来たのはいいものの、仕事も住む場所も簡単には見つからない。ついに空腹で行き倒れてしまったところを、ツケで食事をたかり続ける貧乏探偵・左右馬に助けられ、ふたりの物語は幕を開ける。
気味悪がられて嫌われないよう、鹿乃子は嘘がわかることを隠そうとする。しかし、お人好しで人のことを放っておけない性格のため、おつりをちょろまかした子どもの嘘を見抜いてしまう。その嘘がきっかけで子どもが行方不明になってしまい、鹿乃子と左右馬は事件の解決に乗り出すことになる。
鹿乃子の能力を活かし、無事に事件を解決したふたり。だが、左右馬に嘘を見抜けると知られてしまった以上、もう一緒にはいられないと思っていた。またひとりぼっちに戻る悲しみを堪える鹿乃子だったが、その能力は「たくさんの人の力になれる」と左右馬が認めてくれたことで、祝探偵事務所で助手として働くことに。
家賃は滞納し、食事代はツケにし続けているほど貧乏な左右馬は、探偵の仕事やそれ以外の小銭稼ぎに鹿乃子の能力を全力で活用していく。字面だけを見ると最低なのだが、その裏で左右馬はしっかりと鹿乃子の気持ちをくみ取り、誰よりも寄り添ってくれていた。
たくさんの人から疎まれてきた鹿乃子を、左右馬は無条件で信頼して受け入れてくれる。さらには、「一緒にいるからひとりで悩まなくていい」と向き合ってくれるのだ。能力のせいで何度も傷ついてきた鹿乃子にとって、それが一体どれだけうれしいことなのか。その気持ちを想像するだけで、「良かったね!」と抱き締めてあげたくなる。特殊能力を持つ助手とダメ人間な探偵の凸凹コンビとして二人三脚で歩みはじめたが、事務所に持ち込まれるのはどれも厄介な事件ばかりで――。
本作では、たくさんの事件を通してさまざまな人間ドラマが描かれていく。家族との確執や恋人とのすれ違いなど、思わず感情移入してしまうエピソードが満載だ。次々と巻き起こる謎の真相を追いかけながら、人々が今より気軽に連絡を取り合えない時代だったからこその人情や愛をたっぷり感じられるのも楽しい。そして、一緒に過ごすうちにお互いが「かけがえのない存在」になっていたふたりには、いつしかバディとしての信頼“以上”の感情が芽生えはじめ――。
『嘘解きレトリック』は、第10巻で完結を迎えている。果たして、信頼から愛へと変化しはじめていたふたりの気持ちは、一体どんな結末に向かうのだろうか。
2024年10月4日には、花とゆめコミックススペシャルから新作の『可惜夜行』も発売された。『嘘解きレトリック』の原作・ドラマと一緒に、都戸利津先生が描く月と人をめぐる現代和風ファンタジーの世界を心ゆくまで堪能してもらいたい。