最愛の姉が“ジャガイモ頭の化け物”に…! 閉鎖的な田舎町で発生する恐怖に背筋が凍るホラーコミック

マンガ

公開日:2024/10/9

トナリノジイサン"
トナリノジイサン』(小池ノクト/少年画報社)

 自分が現実だと思っていた世界が、ある日突然変わってしまったら、その事実をどう受け止め、生きていけばいいのだろう。『トナリノジイサン』(小池ノクト/少年画報社)は、そんな“もしも”を考えたくもなる、ホラーコミックだ。

 本作の舞台は、閉鎖的な田舎町。画家になることを夢見ていたひとりの少女は、姉の旅立ちを見送った時に不思議な体験をし、日常の見え方が変わってしまう。

 小さな田舎町で暮らす三倉結希は、画家志望。ある日、夢を叶えるために旅立つ姉を空港まで見送ろうと町内発の電車に乗り込んだところ、意識を失ってしまう。

advertisement

 気がつくと、結希は真っ暗なトンネルの中に取り残されており、姉はジャガイモのような頭の化け物になっていた。

トナリノジイサン

 信じられない状況に困惑していると、巨人のような化け物が出現。その化け物は、最愛の姉に襲い掛かった。

 衝撃的な光景を目にし、パニックになった結希は急いでトンネルの外へ。すると、見慣れた駅が崩壊しており、唖然としてしまう。

トナリノジイサン

トナリノジイサン

 困惑し、母親に電話をして状況を説明するも、信じてはもらえず。結希は納得できなかったが、「何も変わっていない」と自分に言い聞かせ、普段通りの日常を送ろうとした。

 だが、目に映る世界は元通りになってくれない。学校では、見慣れた教師がジャガイモ頭の化け物に見えてしまう。

 私にだけ、現実が変な風に見えている。おかしいのは私。結希はそう絶望したが、何者かが校庭に描いたジャガイモ頭の人間の絵を見て、同じ世界が見えている人がいることに気づく。

トナリノジイサン

 そこで、友人から情報を得て、同様の絵が描かれている場所を調査。さらに、自身も町内の壁にジャガイモ頭の人間の絵を描き、同じ状況に置かれている人と出会おうと奮闘し始める――。

 本作はSF要素と閉鎖的な田舎町の怖さが上手く噛み合っており、読み応えがある。結希の目に映る現実の世界が変わった途端、今まで輝いて見えた“旅立ちの日”がおぞましく感じられるように描く作者の筆力に思わず、感嘆の声も漏れた。

トナリノジイサン

 興味深いのは、町民にとってジャガイモ頭の人間の絵は“不都合なもの”であるという点だ。町民は校庭や壁に書かれたジャガイモ頭の人間の絵を忌々しい表情で眺めたり、必死の形相で消したりする。

トナリノジイサン

 その姿を目にすると、この町には一体どんな恐ろしい秘密が隠されているのだろうかと背筋が寒くなってしまう。

 秘密を解くカギとなるのは、作品名でもある「トナリノジイサン」だろう。本作には、さまざまな昔話に登場する“となりの爺さん”がキーマンなのではないかと思える描写が随所に登場する。

トナリノジイサン

トナリノジイサン

“昔話に出て来る「となりのじいさん」は はたして教訓になるだけのマヌケな存在なのか?実はこっちの方に物語の核心が隠されているのかも?”(著者・小池ノクトさん)

 そんな問いも投げかける作者が昔話をどう絡ませ、オリジナルの“トナリノジイサン”を描くのか非常に楽しみである。

 なお本作では、町民から「甲子園」と呼ばれている青年・来海もキーマンだ。「あいつは、大事な野球の試合で失敗をしてから、進学も就職もせずにブラブラするようになった」。町民は来海をそう蔑むが、彼のバックボーンにも、ジャガイモ頭の化け物が深く関係しているようだ。

 一体、来海はどんな恐怖を味わったのだろう。そして、あの化け物の正体は何なのか。そう想像しながら、結希の闘いにハラハラしてほしい。

文=古川諭香

関連記事

恐怖の世界へようこそ

電子書籍ストアBOOK☆WALKERでは、2024年10月31日(木)までに大人気ホラー作品ピックアップ特集開催しています。
会員登録ですぐ利用できる500円OFFクーポン配布中!オトクなこの機会にぜひ気になる作品をゲットしてください。
詳細はこちら:https://bookwalker.jp/select/3218/?adpcnt=8CuG4EDT

あわせて読みたい