瀬尾まいこさんが描く100年後の世界とは? 将来に漠然とした不安を抱く人におすすめしたい絵本『100ねんごもまたあした』
PR 公開日:2024/10/16
100年後の世界を描いてみてほしいと言われたら、何を思い浮かべるだろう。22世紀には猫型ロボットが登場しているかもしれない、と期待に胸を膨らませていたい以前と違って、今は100年後どころか来年、いや明日にでも、世界で新たな争いが起きるかもしれないと心を沈ませる人も多いのではないか。
仮に日常の安全は守られたとしても、景気がよくなる気はしないし、差別をはじめとする社会問題が解決する日もまだまだ遠そうだ。それでも、きっと100年後は今よりいい世界になっていてほしい、なるはずだと信じて紡がれるのが、岩崎書店のたちあげた絵本「100年後えほん」シリーズ。第1弾は、瀬尾まいこさんとくりはらたかしさんがタッグを組んだ『100ねんごもまたあした』である。
主人公の男の子は、図工の時間に冒頭の課題――100年後を想像して絵を描くことを先生から伝えられる。きっと未来は、今より進化しているはずだと、タイムマシンや「とべるクツ」、宇宙人と共生している姿を思い浮かべて、自由に筆を走らせる。けれどそんな彼の絵を見て、友人のサクヤが言うのだ。「お子さま」だと。「100年後は、地球なんか滅びてるよ」「戦争や環境破壊、このままいけば100年たたなくてもこうなってる」と、サクヤは画用紙を真っ黒に染め上げる。お先真っ暗、というわけだ。
そんなことないよ、未来は明るいよと、胸を張って子どもたちに言える大人が、いったいどれほどいるだろう。自分自身の未来だって、年金はもらえないんだろうな、いつまで働かなきゃいけないのかなと、想像するだけで憂鬱な気持ちになるのに。
でも、瀬尾さんは「そんなことない、かもよ」と物語を通じて言ってくれる。空を飛んだり、海の上を歩いたり、そんな特殊な力はもてないままかもしれないけど、嬉しいこと、楽しいことの可能性はぐっと増えて、今よりずっと自由になれるはずだと、希望のビジョンを見せてくれる。
そんな物語を読んでいると、つくづく思う。100年後を生きる子どもたちのために、胸を張れない自分たちでいいんだろうか。確かに、またパンデミックが起きるかもしれないし、世界から争いは消えないかもしれない。でも、悲しくてつらいことと同じくらい、いやそれ以上に、楽しいことも増えているはず。増やしていこうという気持ちで私たちが生きなくて、どうするのだと。
主人公と一緒に未来への妄想を膨らませながらサクヤは言う。「でもそのころ、俺たちじじいなんだよな」。主人公も答える。「100年後のこどもはずるいね」。でも、同時に気づく。100年後の世界を子どもとして体験することはできないけれど、今この瞬間を、思い切り満喫することはできる。また明日、と約束して、未来に希望を見ることはできる。その積み重ねでたどりつく100年後が決して、暗いものばかりであるはずがないと、瀬尾さんの言葉と、そしてくりはらさんの自由奔放な絵の数々が、信じさせてくれるのだ。
文=立花もも