『春の嵐とモンスター』『野良猫と狼』のミユキ蜜蜂がBLに初挑戦『営業ですから』
更新日:2024/10/18
芯の強いヒロインを軸に恋模様を描いてきたミユキ蜜蜂氏が、今度は男子×男子の恋愛ものを手がける。しかも、主人公は意外なことに、ちょっぴり「軽くて、あざとい」キャラクターだ。
そんな『営業ですから』(白泉社)の単行本が本日10月18日に発売される。同著者による人気作『春の嵐とモンスター』『野良猫と狼』(ともに白泉社)最新刊も同時発売だ。
明るくノリのよい性格で女子からモテたが、付き合いが長続きしない高校時代を送った葦原廉(あしはら・れん)。大学入学後は、特定の恋人より、多くの女子からの人気を得るために、切れ長の目や長身が際立つ久慈一清(くじ・いっせい)と「営業BL」タッグを組むことに。
廉のもくろみは大成功し、2人の一挙手一投足は女子の注目の的だ。しかしモテ度は一清のほうが高め。廉は自身を「ごてごて取り繕って」いると評価するのに対して、一清のことは自然体のままで存在感がある美形と思っている。廉は一清に対してコンプレックスも少しはあるものの、カッコいい同性としてリスペクトする気持ちのほうが強い。計算高いようでいて、廉は根っからの「いいヤツ」なのである。
そんなベストな「営業」パートナーだった一清から廉への突然のキスで、2人の関係は大きく変化していくことに。
当初はうろたえていた廉だが、考えてみれば、他人への興味が低い一清が、営業BLを受け入れたのも、「廉への好意」があったからと思い浮かんでもよさそうなもの。廉は周りの人々に楽しんでもらおうとするサービス精神が高い反面、自分への好意にはややニブいようだ。余裕たっぷりの小悪魔な一清に見つめられたり触れられたりするたびに、心や体が反応してしまい、じたばたする廉のリアクションは、読んでいるとニヤニヤしてしまう。そうして一清に翻弄されていくうちに、廉は少しずつ自分の「欲」に気づいていく。
そもそも恋愛感情にまつわる「重さ」を苦手とした廉が、一清に対しては独占欲を抱いたり、本当に自分を好きなのか疑ったり、その面倒くささを自分の内に見いだしながらも、不器用に一清に好意をぶつける姿は、営業BLでうまく立ち回っていた頃よりも、魅力的に思える。一清が絡むとスマートに振る舞えない自分に戸惑いながらも、「すき」だから深く心を通わせようとする廉を応援したくなる。
いっぽうで、一清は辛い過去を背負っているようで、自身の容貌もあまり好きではないらしい。しかし、廉の無邪気で素直な言動に救われている。この2人、運命の相手のように感じられるが…一清の発する言葉は控えめで、ニブい廉がその真意を測りかねているやりとりは、なんともじれったい。しかし、廉を第一に考え、奉仕するように抱きながらも束縛をしない姿勢でいた一清にも、変化の兆しがあらわれているようで……?
本当の関係を伏せたまま、人気の仲良しコンビであり続ける廉と一清の周りには、男女問わずクセのありそうなキャラクターも顔を出している。これからもなにかと波乱がありそうな予感だが、キラキラを振りまく「営業」から始まった廉と一清の恋愛は、もっと輝かしいものを見つけられそうだ。
文=和智永妙