人気上昇中の女芸人・ミワ子が行方不明に…エッセイ&ショートショート集に隠された“衝撃の真実”に鳥肌。大反響の逆転劇シリーズ第3弾!
PR 公開日:2024/10/21
小説を読んでいると、この作家の脳内はどうなっているのだろう…と驚かされる仕掛けに巡り合うことがある。元お笑い芸人の藤崎翔氏は、まさにそんな作家だ。
藤崎氏は、ミステリ史上伝説級のトリックを詰め込んだ『逆転美人』(双葉社)を出版し、世のミステリ好きを唸らせた実力派。逆転シリーズ第2弾となる『逆転泥棒』(双葉社)も、ラストの“逆転トリック”が反響を呼んだ。
そんな逆転シリーズの最新作となるのが、『逆転ミワ子』(双葉社)である。主人公は、人気上昇中の女芸人・ミワ子。人気俳優と結婚し、コミカルなエッセイ&ショートショート集も発売するなど、公私ともに順調だったはずのミワ子は書籍の発売後、なぜか行方不明に…。藤崎氏はまたしても、あっと驚くトリックでミワ子の身に起きた出来事を明らかにしていく。
本作は、ミワ子が綴ったエッセイ本という設定だ。ミワ子はピン芸人の賞レースで準優勝し、女芸人の賞レースで優勝した実力派。序盤のエッセイでは看護師の激務に限界を感じて、お笑い芸人になったことや作家に憧れた時期があったことなどが明かされ、ミワ子という人物の姿がぼんやり想像できるようになる。
だが、連載3回目、ミワ子は「ネタが尽きた」と綴り、小説家志望だった時期に書き溜めたショートショートも掲載すると宣言。これにより、本作の形が変わる。
ミワ子のショートショートは、まるでコント。言葉巧みな詐欺師がなんとか振り込め詐欺を成功させようとする話や、あえて無礼に振る舞うことで「お代はいらないから帰れ」という店主の言葉を引き出し、タダ飯を成功させようとする客の話など、どんでん返しなオチが光る。
それらの物語には、藤崎氏らしいブラックジョークも満載。ファンとしては短編集を読んでいるような気分にもなり、「一冊で二度おいしい」と感じた。
ただ、ショートショートはミワ子の人生にはまったく関係がないため、ミワ子の人物像はいまいち掴みきれない。もっと、ミワ子の人柄を知りたい。エッセイを書いてほしい。そう思ったタイミングで目に飛び込んでくるのが、人気俳優との結婚を報告するミワ子のエッセイだ。
結婚を公表し、“言えない交際”から抜け出したミワ子は自身のことを綴りやすくなったよう。その後はショートショートだけでなく、エッセイも精力的に執筆するように。クリスマスに元カレの浮気を知ってしまった話や坊主頭を経験した過去などが明かされ、ぼんやりしていたミワ子像が鮮明になっていく。
やがて、ミワ子のエッセイ&ショートショート集は書籍化。作家としての才能も開花させたミワ子は、公私ともに順風満帆のはずだった。ところが、書籍の発売から2日後、予期せぬ事態に…。なんと、ミワ子は突然、行方不明になってしまったのだ。
さらに、ミワ子の夫が逮捕されたことで、世間はミワ子に大注目。一体、ミワ子の身に何があったのか。はやる気持ちを抑え、本作の最終話である「後日談」を読むと、そこには衝撃の事実が。後日談は、ミワ子ではないある人物が綴っているという設定。ミワ子が本作に隠した鮮やかなトリックが明かされ、秘められたメッセージが浮かび上がるのだ。
これは、小説の域を超えている…。ミステリ好きをも、そう唸らせる驚きの全容解明は必見。本作には最後の最後まで楽しめる“粋な仕掛け”も隠されているので、そちらも楽しんでほしい。
なお、本作は華麗な逆転劇に注目が集まるだろうが、他にもたくさんの見どころがある。例えば、ショートショートのクオリティが非常に高いこと。次は、どんなオチが待ち受けているのだろうかと毎回ワクワクさせられた。
また、作者が元お笑い芸人であるため、芸人話にリアリティがあって引き込まれる。コント用のかつらが高いなど芸人ならではの悩みごとや実際にある得るのかも…と思えてしまう業界の裏話は、とても興味深かった。
一字一句まで注目したくなる藤崎ワールドは、唯一無二。小説だからこそ実現できた、このドキドキ感をぜひ味わってほしい。
文=古川諭香