カセットテープに録音したキャラソンを文字起こし。懐かしすぎる平成のオタ活とかけがえのない友情を描いたコミックエッセイ

マンガ

更新日:2024/10/23

交換日記がおわっても

 子どものころからの友だちと大人になっても仲良しのままでいられる人は、一体どれだけいるのだろう。歳をとればとるほど、友人が減っていく人の方が多いのではないだろうか。『交換日記がおわっても』(AK壱乃/KADOKAWA)では、作者のイチノさんと小学校からの親友・さいさんが築いてきた尊すぎる友情とオタ活の歴史が描かれている。

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 小学校1年生のときに出会ったふたりは、中学生になってから加速度的に仲良くなり、輝くような日々をすごしていた。交換日記や手紙の交換など定番のやり取りはもちろん、お互いの家に遊びに行きながら、お絵描きやゲームを楽しんでいた。本作には、こうしたふたりの尊すぎる友情が余すことなく描かれている。

 特に懐かしさと尊さを感じたのは、カセットテープに録音したゲームのキャラソンを再生して、手書きの歌詞カードを作るエピソードだ。空耳で変な歌詞になったり、複数人で歌っているパートを聞き分けたりと、気軽にネット検索ができなかった時代にしか体験できない青春が詰まっている。これほどかけがえのない時間をすごしてきたふたりが今でも一番の親友同士であることは、ある意味必然ともいえるだろう。

 そして、本作の魅力を語るうえで何より欠かせないのは、さいさんが大好きなアニメ『小さな巨人 ミクロマン』の存在だ。ミクロマンは1970年代に生まれた玩具シリーズで、1999年にアニメ化されている。さいさんは20年以上ミクロマンを愛し続けていて、その愛は公式にすら認知されるほどだという。本作の後半部分のほとんどがミクロマンにまつわるエピソードなので、ミクロマンが好きな人にとって必読の作品ともいえる。

 そんなミクロマンでのさいさんの推しは、約20年前に発売された玩具の付録の冊子に登場するキャラクター。あまりにもマイナーすぎてまったく仲間が増えない中、孤独に推しを愛し続けていた。たとえ世界中でたった1人でも、推しへの愛を貫く姿勢に敬意を示すと共に、自分を重ねるオタクもいるのではないだろうか。こうしたオタクの突き抜けた愛を眺められるのも、本作の楽しいポイントだ。

 イチノさんとさいさんのかけがえのない友情は、現在でもずっと続いている。尊すぎる関係と平成オタ活の懐かしさを楽しみながら、深すぎるミクロマンへの愛を堪能してもらいたい。

文=ネゴト / 押入れの人

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