「正直、そんなに売れないでって気持ちも(笑)」漫画家志望の高校生男女の青春物語『描くなるうえは』著者コンビと“師匠”絵本奈央氏の「師弟鼎談」が実現!!
公開日:2024/10/29
――蒲先生と高畑先生のお二人は、絵本先生のコミックスに付箋をつけて持ってきてくださっています。
蒲:絵本先生はとにかく光の表現が素晴らしいんです。がっつりワントーンのグラデを貼って白を差したり、ハイライトでとばしたり、人間をシルエットで見せたり。情報の強弱のメリハリをつけることで印象が強くなったり、キャラの表情を読み取りたくなるんじゃないかなと思います。
絵本:いえいえ、恐縮です(笑)。
蒲:キラキラしたものも描けるし、グっとくる演出もできますし、1枚絵で見せるところでは、ハッと手を止めてしまいます。背景の入れ方とかアングルとかも、マンガを読んでいるというより映画を観ているような感覚です。参考にしたページを挙げ出したら止まりませんでした(笑)。
絵本:ありがとうございます。そんなに褒めていただいて。
――お二人は絵本先生の初連載の『それでも僕は君が好き』(原作:徐譽庭先生)からアシスタントに入られていました。
高畑:これ、蒲さんが描いたんじゃないですか? 映画のところ。
蒲:今見ると拙くて、恥ずかしいです…(笑)。
絵本:あ~! ここ! すごくいい味を出してくださって、嬉しかったです。
蒲:いえいえ、画面を汚してしまって…。でも、こんなに大きいところを預けていただいてすごく光栄でした。
――その後、高畑先生は自身の連載のために現場を抜け、絵本先生は『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(原作:岡田麿里先生)を経て、『ジョゼと虎と魚たち』(原作:田辺聖子先生)の連載を始めました。
蒲:『ジョゼ虎』から絵本先生がデジタルを取り入れ出して、もう追いつけない状態になりました。序盤の水のシーンとか、無音の表現が特にすごいんです。
絵本:蒲さんのおかげです。この頃の蒲さんは、いいなと思ったものをどんどん吸収して自分のものにしていて、本当にすごいなと思いました。最後の見開きも蒲さんなんですよ。
蒲:いやいやいや。
絵本:ネームの時点でここの背景は絶対に蒲さんだなと思ってました。今見ても、ベタの中にも情報が見えたり、ちゃんと白く抜けてるのに質感があったりと、本当に上手だなと思います。私は最後にトーンを貼っただけです(笑)。
蒲:ベタの中に情報を入れるというのは、絵本先生に教えてもらったことなんです。
――そして、高畑先生が前作の『人類を滅亡させてはいけません』の連載を始める際、蒲先生が作画担当をつとめることになり、職場を離れました。
絵本:蒲さんにはずっと頼りっぱなしで、蒲さんありきでマンガのクオリティを保っていたので、いなくなるとなったときは「あー! まあしょうがないか」って思いました(笑)。
高畑:蒲さんに作画担当を頼むってなったときは、「いろんな人から恨まれるんだろうな」と思いました(笑)。
蒲:ご迷惑をおかけして申し訳ございません…。
絵本:いえいえ、全然です!