「正直、そんなに売れないでって気持ちも(笑)」漫画家志望の高校生男女の青春物語『描くなるうえは』著者コンビと“師匠”絵本奈央氏の「師弟鼎談」が実現!!
公開日:2024/10/29
――『描くなるうえは』で好きなキャラは誰ですか?
絵本:レンちゃんのビジュアルが大好きなんですけど、ニーナちゃんも当然めちゃくちゃ可愛いですし、一番は上原くんが本当にすごくいいキャラだなと思っています。
蒲:嬉しいです。やっぱり、主人公に入り込めなかったり、好きになってもらえなかったりするのは嫌だなと思うので。
高畑:ラブコメの主人公は、起こることに対してちゃんとドキドキしてほしいなと思っています。いわゆる「やれやれ系」のキャラには、「高校生でそんな奴いないよ」と思ってしまうので(笑)。
絵本:なるほど。
高畑:人一倍感情が揺れてほしいって思いながらネームを描いていたら、顔が真っ赤っかだったり、汗かいたりしてばかりで、普通の顔があんまりないんです(笑)。
蒲:上原くんには頑張ってほしい、成長してほしいって気持ちがすごくあります。
高畑:『めぞん一刻』の五代くんみたいに、ラブコメでダメな主人公がだんだんカッコよくなっていくのがいいなって思っていて、それをイメージしています。
絵本:最近の展開でも成長をすごく感じましたし、そこまでの過程も自然に描いてるから、すごいなと思います。
高畑・蒲:ありがとうございます。
――『描くなるうえは』で好きなエピソードはありますか。
絵本:ニーナちゃんと上原くんの子どものときの、漫画を描くきっかけになったエピソードです。前作の『人類を滅亡させてはいけません』にもあった高畑先生の持ち味が感じられましたし、二人の良さがめちゃめちゃじわっと出ているなと思いました。
高畑:ニーナがおばあちゃんのために毎日ちょっとした絵を描いたという話は、蒲さんの思い出話を描いたものなんです。
絵本:以前、蒲さんの個展で見たことがあるかもしれません…! ニーナちゃんのキャラともすごく合ってますし、しっくりきました。
蒲:ありがとうございます(笑)。でも、上原くんの描いた『カラスの王様』というマンガも、実は高畑さんが本当に小学生のときに絵本として描いたものなんですよ。
絵本:そうだったんですね!
蒲:自分の体験を入れるというのは、本当に恥ずかしかったですし、大丈夫かなと思っていたんですが、打ち合わせで良いと言ってくださったので、高畑さんのことも「自分だってあるじゃないか、出せよ~」と説得しました(笑)。子どもらしく自由な感じがとてもかわいくて、すごくいい話なんです。
絵本:あとは鉄板なんですけど、上原くんがニーナちゃんのことを好きだと気づくシーンも好きです。ネームも本当に素敵だし、マンガのページが風に吹かれてペラペラっとめくれる演出にもうるっときました。背景からもキャラクターの感情が伝わってきました。
蒲:この海はモデルがあるんですが、本物はこんなに光ってなかったんです。感情と背景をリンクさせるのは、絵本先生に教えてもらったことです(笑)。
高畑:蒲さんがアシスタントさんに「もっと光らせてください」って言ったんでしたっけ (笑)。
蒲:ロマンチックにしたくて、気合を入れていたところなので嬉しいです。
絵本:すごく伝わります。感動しました、本当に。
蒲:ありがとうございます。
――最後に、お互いへのメッセージをお願いします。
絵本:お二人のことは心から素晴らしい作家さんだと思ってますし、10年前からお世話になっているので、とにかく今以上にどんどん売れて、いろんな方に知ってほしいです。ですが正直な気持ち、そんなに売れないでっていうのもあります(笑)。
一同:(笑)。
絵本:複雑です(笑)。私も置いていかれないように頑張ります。
蒲:いえいえ、こちらこそです。絵本先生は描けないマンガがないですし、アシスタントさんに指示を出してまとめる監督さんとしてもすごいので、今もどうやったら絵本先生みたいにできるんだろうと思っています。
絵本:私はけっこうふわふわしちゃってたというか、特に蒲さんには「いい感じにしてください」みたいな言葉で投げちゃってましたけど(笑)。
蒲:絵本先生の職場ほど、資料とイメージで伝えてくださるところはなかったです。自由さを残してくれるのでやりがいもあって、「これ描いたんだ、へへっ」とこっちまでうぬぼれさせてくれました。楽しかったですし、この作品にまぜてもらえてうれしいなと、スタッフさんが気持ちよく作業されてたので、今のスタッフさんたちともそんな関係になれたらいいなと常々思っています。
絵本:ありがとうございます。蒲さんは上手なだけじゃなく、イメージ力もすごくあって、お任せした方がこちらの想像を超えるものが上がってきたんです。何でも上手だし、「こんなのいいな」と想像しながら描けるのが、すごくいいなと思っていました。
蒲:もったいない言葉すぎて、ちょっとダメですね(笑)。体熱っ(笑)。
絵本:長い間、ありがとうございました。
高畑・蒲:こちらこそ、ありがとうございました。