「このゲーム 私勝ちね」美しすぎる大嫌いな姉に復讐を誓った妹。美醜と欲望が交錯する姉妹の壮絶な闘い
PR 公開日:2024/11/1
同じ親のもとで同じ環境で育てられても、同じように育つとは限らない。それぞれ良い面や悪い面があるにしても、どうしても比べられてしまうのがきょうだいではないだろうか。『姉妹逆転ゲーム~ずっと嫌っていた美しすぎる姉~』(姫神ヒロ/DPNブックス)は、嫉妬や復讐、憎しみ合う姉妹の、美醜と欲望が交錯する激しい闘いを描いた愛憎劇である。
誰もが羨む美貌で人気モデルの双子の姉スミレと、対照的に容姿にコンプレックスを抱えながらも真面目な仕事ぶりが認められている妹のノバラ。物語は、スミレの婚約パーティーで、ノバラが衝撃の事実を知るところから始まる。スミレは「妹が好きになった人を落とすゲーム」と称して、ノバラの恋愛対象を次々と奪い、あざ笑っていたのだ。さらに、スミレの結婚相手がノバラの憧れの人・光であることを知り、ノバラは復讐を決意する。
昔からドラマや漫画などフィクションの世界でも「きょうだい」の確執が描かれてきた。実際、きょうだい関係に悩む人は多いのではないだろうか。特に感情のこじれは男きょうだいよりも女きょうだいのほうが泥沼化することが多いように感じる。人の不幸は蜜の味ではないが、泥沼化する女きょうだいのやり取りは目が離せない。本作も姉妹間で繰り広げられる激しい闘いと駆け引きが何といっても最大の魅力である。優劣逆転の連続劇に、読者を飽きさせない展開が続く。憎しみ合う姉妹だが、時に味方となり協力する場面もあり、複雑な人間関係の機微が巧みに描かれている。
また物語は急展開の連続で、ページをめくる手が止まらない。当初は双子の姉妹の愛憎劇だと思われたストーリーは、次々と明かされる新事実や新キャラクターの登場により、予想を遥かに超える壮大なものへと発展していく。全く似ていない双子という不思議や、彼女たちの生い立ちへの疑問など、ミステリー要素も効果的に盛り込まれ物語は進んでいく。
双子とはいえ全く異なった容姿を持つスミレとノバラ。本作は容姿の問題を多角的に描いている点も見どころの一つだ。容姿で社会を渡り歩く姉スミレと、容姿にコンプレックスを抱える妹ノバラ。さらに、全身整形をした第三の人物の登場により、美醜に関する様々な視点が提示される。人は容姿の良さによって幸せを手に入れることができるのか、容姿へのコンプレックスは不幸へと繋がっているのか、姉妹たちの美醜と欲望が交錯する激しい闘いに考えさせられてしまう。
本作は、単なる姉妹げんかという「ゲーム」を超えた壮大な物語である。美しくも醜い人間の欲望と、それぞれが追い求める幸福の形が鮮烈に描き出され、読者は姉妹の激しいゲームの行方と彼女たちが幸せになれるのか、最後まで目が離せなくなるはず。容姿、嫉妬、復讐、そして愛。これらのテーマが絶妙なバランスで織り込まれ、テンポの良い展開と深みのある人間ドラマを楽しむことができる。姉妹それぞれの結末を是非見届けてほしい。
文=ネゴト / Ato Hiromi