“しごと”と“こころ”は同じ成り立ち。『ツレうつ』作者・細川貂々が絵本で解説する“しごと”とは?【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2024/11/7

しごとってなんだろう?"
しごとってなんだろう?』(ほそかわてんてん/講談社)

 『ツレがうつになりまして。』の作者・細川貂々さんが、仕事の意義や大切さがイラストとわかりやすい文章ですんなりと頭に入る絵本『しごとってなんだろう?』(ほそかわてんてん/講談社)を刊行しました。

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しごとってなんだろう?

 私たちはたまに(時には毎日のように)、仕事のことで子どもとの約束を守れずにいたり、子どもを失望させたりしますよね。「仕事のおかげでご飯が食べられるんだよ」「仕事がなくなったら大変」などと説明しますが、“大人をそんな大変な目に遭わせる仕事って何?”と、子どもの不信感はよけいに膨らんでいるかも。

 たしかに私たちは、仕事に振り回されることが多いものです。本書には「いうこときけー」と理不尽なことを言う“しごと”という名の化け物が描かれていて、思わず苦笑いしました。そんな仕事の実態が何かと問われたら、大人もうまく答えられないような気がします。

●仕事は誰かの役に立つためのもの

しごとってなんだろう?

しごとは こころと同じなりたちでできてるんだよ
(14ページより引用)

 本書によれば、“こころ”は他の人の気持ちをわかるためにあるもので、“しごと”は他の人のために何かしてあげること。つまり、“しごと”は“こころ”と同じ成り立ちでできているのだといいます。

 たしかに、私たちは心があるから他の人と言葉で気持ちを伝え合うことができているし、私たちの生活は他の人たちが作ってくれた物によって成り立っています。仕事は誰かの役に立つためにあるのだという説明が、子どもが“しごと”の実態を理解するための手がかりになりそうです。

●仕事は悪いことばかりじゃない

しごとってなんだろう?

でもおとなって しごとのことを考えるとき なんだか つらそうだよ
(22ページより引用)

 誰かの役に立てる仕事はすばらしい! それなのに、仕事をする大人はつらそうなため息ばかり…。たしかに仕事は疲れるし、悩むことも多いので、子どもにいい顔を見せられていないかもしれません。このままではやっぱり“しごと”は子どもにとって悪者のまま。

 本書によれば、仕事は他の人の役に立つだけではなく、自分もお金をもらったり喜んでもらったりして得をするもの。これで、“しごと”にも良い一面があることを伝えられるのではないでしょうか。

●子どもの中に「好き」をたくさん増やしていく

スキなこと が とくいになる とくいなこと を スキになる
(27ページより引用)

 素敵な仕事に出会うためには、苦手なことより好きなことや得意なことをしたほうがいい…など、子どもが“しごと”を自分事として捉えるための道筋も本書には描かれています。

 将来どんな仕事をしたらいいのか、働くお母さんお父さんだからこそ実感の伴ったお話ができるのではないでしょうか。子どものうちに知ってスタンバイしておけば、好きなことのチャンスを掴みやすいような気がします。子育ての中で、子どもの「好き」をたくさん増やしていけるといいですよね。

 意外と説明できない、仕事の実態のお話。大人もまた仕事の前提に立ち返り、苦労が絶えないのはみんな同じだと思えて気がラクになったし、誰かの役に立っているという大きな意義に向き合えました。これからは、仕事のいい一面も我が子に見せたいと感じています。

文=吉田あき

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