男性専用マッチングアプリから始まる恋。ヘタレな先輩とクールな後輩で描く、むずきゅんサラリーマンBL【書評】

マンガ

PR 公開日:2024/11/6

片想い中の後輩とマッチングが成立しました"
片想い中の後輩とマッチングが成立しました』(愛葉もーこ/白泉社)

 仕事のデキる爽やかイケメン、蓮見雄馬。彼は最近ひそかに悩んでいた。それは、教育係として指導している新入社員・瑞樹くんになぜかドキドキしてしまっているから。もしや自分はゲイなのでは?と 悩んだ末にゲイのためのマッチングアプリに登録し、“Mさん”という人と会うことに。ところが待ち合わせ場所のホテルの一室で自分を待っていたのは、なんと瑞樹くんだった……。

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片想い中の後輩とマッチングが成立しました

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

『弟が連れてきた恋人は男子高校生でした』(オーバーラップ)や『その記憶はありません』(白泉社)など、コメディBLからシリアスBLまで幅広く手がける愛葉もーこさん。新作となる『片想い中の後輩とマッチングが成立しました』(白泉社)第1巻が発売された。

 主人公の蓮見は28歳にして恋愛未経験。そんな自分をそれまではなんとも思っていなかったけど、後輩の瑞樹くんが気になるようになって以来、異性愛者だと信じきっていた自らの性的指向に疑問を抱く。そしてマッチングアプリで知り合った“Mさん”に色々と相談をするのだが、その“Mさん”が瑞樹くんだと判明して大パニック。瑞樹とキス(それもファーストキス!)をして、改めて自分は彼に恋をしていることに気がつく。瑞樹くんのことをもっと知りたくなり、「友達からお願いします!!」と告白する。

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

 恋愛初心者の蓮見と、基本的には来る者拒まずの瑞樹。経験値では圧倒的に瑞樹の方が高いだけに、蓮見は常にいっぱいいっぱいだ。デートに誘うのにも、手をつなぐのにも、もちろんキスをするのにも悩みに悩み抜いてしまう。それはひとえに瑞樹に嫌われたくないためだ。瑞樹の表情や反応の一つ一つにどぎまぎして、攻めなのにちっともリードできない自分に不甲斐なさを覚える。

 だが、読者的にはそこがいい。そこがいいんですよ蓮見さん、と呼びかけたい。

 好きな相手に嫌われたくないと思うのは、恋する者にとって当たり前のこと。それに瑞樹と身体の関係をすぐに持とうとしていないのは(たとえそこに未経験者ゆえの怖気が含まれているとしても)、身体よりも心の結びつきを大切にしているから。つまり、瑞樹のことを本当に大切にしているからだ。

 蓮見のそんなまじめさと誠実さが微笑ましい。そして、彼のそんな気持ちは瑞樹にもしっかり伝わっている。

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

 街中で元彼につきまとわれている瑞樹を守ろうとしてくれたこと(勘違いだったのだけど)。愛想がないと思われがちな瑞樹の本質的な部分を、ちゃんと見てくれていること。蓮見の優しさと愛情は少しずつ瑞樹のなかに染み込んで、瑞樹自身も気づかぬうちに蓮見に恋をしはじめる。2人の心が少しずつ重なりあっていく姿が、テンポのいい笑いと胸きゅん描写の巧みなブレンドで展開される。特にやはり恋に悶え悩む蓮見の様子が、本人には申し訳ないのだが大変おかしい。

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

片想い中の後輩とマッチングが成立しました

 恋愛自体が初心者の蓮見と、性経験は豊富ながら誰かと深い愛情関係は築いたことはないらしい瑞樹。彼らはどんな恋人同士になっていくのだろう。関係がいよいよ深まってくるであろう2巻が今から楽しみだ。

文=皆川ちか

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