「自分の文章を自分で読むのはすごく恥ずかしかった」著者・上白石萌音本人が朗読。話題を呼んだ初のエッセイ集『いろいろ』がオーディオブックで登場!

文芸・カルチャー

公開日:2024/12/6

小説はエッセイの5倍くらい読むのが恥ずかしかった

――そしてこのほど、『いろいろ』のオーディオブックがAudibleで配信されます。著者みずからが朗読するオーディオブックはとても稀有な存在だと思いますが、文字を追い、頭のなかで読んでいた『いろいろ』のなかにある文章が、そのままの姿で立ち上がってきたような感覚をおぼえました。

上白石 よかった! 自分の文章を自分で読むのはすごく恥ずかしかったんです(笑)。朗読はなるべく色をつけないよう、余白を残すようにと心掛けて臨みました。私が書いたものを私が読んでいる時点ですごくカラーがついていると思うので、それ以上のことをしないよう、ただただこの声で読みあげるということに集中していました。朗読することによって、こういう意味も、こうした解釈もあるんだと気づくこともオーディオブックの面白さのひとつではあると思うのですが、今回はなるべく本と相違がないよう、声で文字をシンプルに立ち上げようということに心を尽くしました。

上白石萌音さん

――朗読をされているとき感じたこと、「シンプルに読む」と決めたなかで工夫されたことは?

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上白石 自分が書いたものを読むので、誰にも何も言われない、という自由度はすごく高かったのですが、逆にどうとでも読めてしまう難しさがありました。そのなかでしてみたかったのが「文字ではできないこと」。エッセイのなかに鹿児島で暮らす祖父母の言葉を書いたのですが、その箇所を鹿児島弁のアクセントで読むなど、朗読ならではの遊びのようなものも取り入れてみました。

――オーディオブックでは、初の創作となった短編小説「ほどける」も収められていますが、こちらを朗読したときはいかがでしたか?

上白石 小説はエッセイと違い、語り手が自分ではなく、自分が生み出した違う人格になるので、異なるスイッチが必要でした。そしてエッセイの5倍くらい読むのが恥ずかしかったです(笑)。自分が知っている感情や思っていることを小説にしたので、小説だからと言って自分自身からきっぱりと切り離すこともできませんでした。エッセイがありのままだとしたら、小説はちょっとそこからは外れたところ、自分の思っていることを他の人に言ってもらっているみたいなところがあったんです。朗読をするときはそれを役者として読むことになりますが、自分が書いたものにちょっとした色づけをするということに対して羞恥心が出てきてしまいました。

――読んでから聞く、聞いてから読む。オーディオブック版がリリースされたことで、さらに味わい方が増えましたが、どんな風に楽しんでほしいと思っていますか?

上白石 耳から入ってくるとよりカジュアルになると思うので、たとえば洗い物をしながら聴くなど、さらっと楽しんでいただけたら。オーディオブックは、何か聴きたいけど、今の気分は音楽じゃないなと思うときにノンストレスで聴けると思うんです。すでに本を読んでくださっている方には、一度、目で読んだ文章が耳から聞こえてくる面白い体験だと思いますので、ぜひそれを楽しんでいただきたいです。オーディオブックから入ってくださる方には、興味を持っていただけたら、装丁にもすごくこだわった紙の本もぜひ手に取っていただきたいなと。そうして本とオーディオブック版の相互作用が生まれるとうれしいです。

上白石萌音さん

――オーディオブックには、上白石さんが熱中して読んだという、作家としめきりについて書かれた『〆切本』(左右社)という一冊から発想を広げ、ご自身の内側に入っていく書き下ろしエッセイ「〆切る」も特典音声として付いてきます。

上白石 この一編は、一番上手に書けたエッセイだと思っていて、自分でもとても気に入っているんです。さらにもうひとつ、執筆のリアルな裏側がわかる「忘れられない締め切りよもやま話」も収められています。これは録音ブースの外でちょっと気を抜かれていた担当編集者Sさんにお声をかけ、急遽、対談という運びになったもの(笑)。この本は企画や執筆を導いてくださったSさんとの共著みたいなところもあるので、立役者として出ていただかないと始まらないなと思いまして。Sさんはとてもいい声をお持ちのオーディオブック向きの方。二人のおしゃべりもぜひ楽しんでいただきたいです。

――楽しみがいっぱい詰まっていますね! 最後に上白石さんおすすめのオーディオブック版とっておきの楽しみ方を教えてください。

上白石 オーディオブックは、冒頭の「はじめに」からページどおりの順番で収録していったのですが、朗読を始めた頃と終わる頃の印象がちょっと違うのではないかと思うんです。というのも、読み始めの頃は本当に緊張してしまい、探り探りで、文章と少し距離がある感じだったのですが、読んでいくうちに自分の本を自分で読むということに慣れていったんですね。その経過を楽しめるのはオーディオブックならでは。「あ、なんかこいつ、慣れてきたな」みたいなことが(笑)、時間の経過とともにわかってくるかもしれませんので、そこもひとつ楽しみに聴いていただけたらと思います。

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