紫式部『源氏物語 二十四帖 胡蝶』あらすじ紹介。源氏物語一のモテヒロイン・玉鬘の恋の行方は!? 養父・源氏との禁断の恋に落ちるのか…?
公開日:2024/11/29
平安貴族の物語として有名な『源氏物語』ですが、古文で書かれていることからとっつきにくく感じる方もいるかもしれません。古典文学を身近に感じられるように、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第24章「胡蝶(こちょう)」をご紹介します。
『源氏物語 胡蝶』の作品解説
『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。
「胡蝶」は源氏に引き取られた玉鬘(たまかずら)が結婚するまでを描いた「玉鬘十帖」の1話です。養女である玉鬘に対し密かに恋心を抱いていた源氏は、遂に行動を起こし玉鬘に愛の告白をします。玉鬘に迫るシーンは生々しく描かれ、玉鬘の嫌悪感も切々と伝わります。今まで容姿だけでなく振る舞いや人柄も輝かしく描かれていた源氏ですが、その魅力に陰りが出てきているのか、読者も身構えてしまうような一場面です。また、後に重要人物となる柏木が登場し、玉鬘に求婚します。他の求婚者も現れ、今後の展開に目が離せません。
これまでのあらすじ
10代の頃に夢中になった恋人・夕顔の死から20年近い年月が経ち、偶然夕顔の娘を見つけ出した源氏は、表向きは実の子として美しく育った玉鬘を引き取った。夕顔の面影に実の父である現在の内大臣(以前の頭中将)の気品も加わったような玉鬘の美しさに、源氏は親子の情愛以上のものを感じ始めていた。
『源氏物語 胡蝶』の主な登場人物
光源氏:36歳。妻や恋人や娘たちを住まわせるため六条院を造営する。
紫の上:28歳。源氏の妻。六条院では春の町に住む。
玉鬘:22歳。夕顔と頭中将(現在の内大臣)の子。母・夕顔の死後、筑紫で育つ。
秋好中宮:27歳。里下がりをして秋の町で過ごす。
柏木:内大臣の息子。玉鬘とは血の繋がった姉弟。
『源氏物語 胡蝶』のあらすじ
六条院の紫の上の御殿は春を迎え格別な美しさであった。春の町で秋好中宮の女房を招いて催された管弦や舞の宴は夜まで続き、貴公子たちも集った。紫の上は秋好中宮に、昨秋にやり取りした和歌の返事を出し、風流な春秋争いを楽しんだ。
源氏のもとに引き取られた玉鬘は、貴公子たちの注目を集めていた。源氏は玉鬘の婿を簡単には決めかねていた。親子の情愛以上のもの、つまり玉鬘への恋情を感じた源氏は、玉鬘が実の娘であることを知らない内大臣にその事実を伝えようかと思う折もあった。
その一方で、源氏が期待していた通り、玉鬘のもとに貴公子たちからの恋文が多く届くようになり、中には内大臣の息子である柏木、兵部卿宮、右大将といった人物からの手紙があった。人柄はいいが浮気性であったり、すでに長年連れ添った妻子がいたりと、一長一短であることに加え、玉鬘を手放すことが惜しいと感じていた源氏は玉鬘の相手を決めずに求婚者の気をもませていた。
源氏は下心を隠しながら、玉鬘のもとに出向いては届いた手紙を確認し、返事の出し方を意見した。源氏の玉鬘への思いに気が付いていた紫の上は、嫉妬交じりの皮肉を言った。玉鬘の世話をするうち源氏の思いは募っていき、ある晩ふっくらとした手や薄い衣から透けて見える白い肌を見て、思わず玉鬘の手を取り恋心を告白した。抑えきれなくなった源氏は玉鬘の隣に横になったが、男女の関係を知らない玉鬘は、あまりのことに涙を流していた。その夜は添い寝をしただけで帰っていったが、その後も言い寄る源氏に対し玉鬘は嫌悪感を抱き、ふたりの関係を誰にも言うことができず思い悩んでいた。