令和ロマン・髙比良くるま「M-1再挑戦理由の半分は松本さんの不在」。漫才を“過剰考察”した著書は「巨大な反面教師」と語る真意《インタビュー》

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更新日:2024/11/23

漫才の邪典

髙比良くるまさん

——同時期にNON STYLE石田さんが漫才について書いた『答え合わせ』(マガジンハウス)が出るので、さらに「考え過ぎのお笑いファン」を圧倒できそうですね。

くるま:それはめっちゃそう。石田さんも漫才の本を出すと聞いて「発売時期どうしますか?」って話になったけど、同じ時期に出したほうが絶対相乗効果がある。どっちも買ってほしいんで、かぶっている内容は消しました。石田さんが正典だとしたら、僕のは“邪”典。書き手の世代が違うのも面白いし、石田さんの本は本当に優しい。だから逆にしようと思って、こっちはすげぇ“早く”しました。

——たしかに、くるまさんが早口でしゃべっているみたいなテンポの本でした。

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くるま:丁寧に書こうとかも考えてたんですけど、後から全部口語に変えたんですよ。「おせぇな」と思って、めちゃくちゃ口語にしてスピード感を持って読めるようにしました。僕自身活字を読むのが苦手なんで、この本は自分が読めるギリギリのページ数です。これ以上長くなったらブチ切れてます。本当に嫌なんですよ、なげぇ本。

——ではこの本は、M-1前に読み終わっていてもらうのが良いですね。

くるま:考え過ぎて不安になってる人は冷められると思うんで、読んでほしいですね。自分より泣いてる友達がいたら、泣き止んじゃうじゃないですか。「あ、あ、大丈夫……?」みたいな。それと同じで、読んでフラットに戻ってほしい。で、読んでも考えずにはいられないヤツはこれで理論武装して、SNSで中途半端なことを言ってる人を駆逐してほしい。この時期から絶対に「実はこうだ」とか「○○は決勝確定」とか、言うヤツが出てきますよね。それに苦しめられてる芸人もいるんで、中途半端なことを言ってるヤツらをネットで攻撃してほしいです(笑)。

——本のなかで、新M-1は「2015年~2018年の第1章」「2019年~2023年の第2章」を経て、「2024年で新章開幕か」というお話がありました。新しい時代に入るだろう今年、どんな漫才が勝つと思いますか?

くるま:「そうなってほしい」という願望ですけど、この本で分析のブームが終わり、明るくて楽しい漫才が勝ってほしいです。そもそも、M-1のエントリーページには「審査基準“とにかくおもしろい漫才”」と書いてあるんですよ。だから「とにかくおもしろい漫才」が勝ってほしいですね。

 はっきり言ってしまうと、インディアンスさんがまた決勝に行けるようになんなきゃダメですよ。インディアンスさんに逆風吹いてる場合じゃないんだよな、マジで……って、きむさんに言いました(笑)。今って、お笑い関係者じゃなくても「伏線回収」とか「フリ」みたいな言葉を知ってる時代じゃないですか。そうなると小ボケを連発しても受けないし、でっかい展開が無いと評価されない。でもそういうのじゃなくても、面白かったらウケて良いし勝って良いと思うんです。

 この本を書くことで「手の内を明かしてる」とか言われることもありますけど、いや別に、お笑いを知らない人がこの本を読むわけはない。だからテクニックとかは一般にバレないし、逆に中途半端に考察してるお笑いファンが冷めてくれたら見方は中央値に寄る。「それで良いじゃん」って感じですね。

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