紫式部『源氏物語 三十帖 藤袴』あらすじ紹介。源氏、夕霧、髭黒… 世の男性を虜にする玉鬘。男たちにワンチャンあるのか!?
更新日:2024/12/6
平安時代に執筆された王朝文学の名作『源氏物語』を読んだことはありますか。古典作品であるため難しく感じる方も多いかもしれません。どんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第30章「藤袴(ふじばかま)」をご紹介します。
『源氏物語 藤袴』の作品解説
『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。
「藤袴」で玉鬘(たまかずら)はモテ期の絶頂にいます。しつこく口説き続ける源氏は言うまでもなく、以前から玉鬘に恋をしていた蛍兵部卿宮、堅物の夕霧さえも虜にし、帝も彼女に関心があるようです。宮仕えを前に最後のチャンスを狙って玉鬘を口説く男性たちをひらりとかわしていきますが、なぜか蛍兵部卿宮は少し特別扱いで、唯一返事を出してこの章は終わります。次章で玉鬘十帖は完結しますが、玉鬘が誰と結ばれるのか気になる展開です。
これまでのあらすじ
養父でありながら玉鬘に恋心を抱いていた源氏だったが、ついに玉鬘が内大臣の実の娘であることを内大臣本人に告げた。内大臣は事実を知り喜ぶ一方で、源氏と玉鬘の関係を疑っていた。玉鬘の裳着が執り行われ、宮仕えの話が進んでいった。
『源氏物語 藤袴』の主な登場人物
光源氏:37歳。血のつながりのない玉鬘を引き取った。
内大臣:以前の頭中将。玉鬘の実の父。
玉鬘:23歳。源氏に引き取られた養女であるが、実の娘ということになっている。
夕霧:16歳。故葵の上と源氏の実子。生真面目な性格。
髭黒大将:32~33歳くらい。色黒で髭が多い。
『源氏物語 藤袴』のあらすじ
玉鬘は尚侍(ないしのかみ・帝に仕える女官)として宮仕えすることを皆から勧められるが、秋好中宮や弘徽殿女御と冷泉帝の寵愛を競うことになりはしないかと人知れず思い悩んでいた。実の父である内大臣に真実を打ち明けたことで、源氏は玉鬘にいっそう執着するようになり、内大臣は源氏に遠慮して娘として扱ってくれることもなく、人目には好色な女とみられていることだろうと思うと、苦悩は深まるばかりだった。
そんな折、夕霧と玉鬘の祖母である大宮が亡くなった。喪に服す玉鬘を、同じく喪服姿の夕霧が源氏の使いとして訪ねた。以前から夕霧は玉鬘に親身にしていたので、姉弟の関係ではないということが分かってからも急に態度を変えることはなく、御簾に几帳を添えるだけで間に人をはさまずに対面していた。源氏から預かった伝言を述べているうち野分の日に見た玉鬘の顔が思い浮かび、夕霧は玉鬘に恋心を告白する。藤袴(蘭の一種)を御簾の中に差し出し、それを取ろうとした玉鬘の袖を掴んだまま歌を詠んだが、玉鬘には相手にされなかった。
告白したことを後悔しながら、源氏のもとに戻り玉鬘の将来について、また源氏と玉鬘の関係について問いただした。内大臣がふたりの関係を疑っているという噂もあると言って真相を聞き出そうとする夕霧の追及を、源氏は笑いながらかわしたが、内大臣は源氏の気持ちを見破っていたのだと空恐ろしくなった。
玉鬘は喪が明ける10月頃から出仕するということで、その前に何とかして玉鬘に会いたいと求婚者たちは侍女たちに必死になって取次ぎを頼んだ。柏木は玉鬘が実の姉と知って、諦めた様子だが、髭黒大将は内大臣にも頼み込むほど玉鬘に執心していた。人柄や将来性も問題なく婿にふさわしい人物と内大臣は考えていたが、源氏は玉鬘との縁談を進めようとはしなかった。髭黒大将には紫の上の異母姉である年上の妻がいて、その妻の性格に問題があって離縁をしたがっているということが気に入らない。
9月になると、求婚者からの恋文が続々と届いた。玉鬘は自ら読むこともなかったが、唯一蛍兵部卿宮にだけは返事をした。