一番新しい「ジャンプ」の一番人気!無敗の魔王がいじめられっ子に転生し、ハンター養成校で無双『ラスボス少女アカリ』
PR 公開日:2024/11/23
はちゃめちゃに強い主人公が悪くてヒドいやつらを蹴散らすバトル少年マンガの爽快感を、ひとりの少女の姿をもって描く作品がある。集英社が2024年5月に創刊した縦スクロールマンガアプリ「ジャンプTOON」、その立ち上げタイトルの1本で11月現在の人気トップ作『ラスボス少女アカリ~ワタシより強いやつに会いに現代に行く~』(岸馬きらく:原作、酒ヶ峰ある:作画)だ。
異世界の迷宮(ダンジョン)で討伐されることが存在意義のラスボス魔王は無敗のまま1万年を過ごし、飽き飽きしていた。己を倒してくれる猛者を求めた魔王は地球へと転生、いじめで命を落とした女子高生・アカリの肉体に乗り移る。
その地球には異世界のゲートからモンスターがあふれ出るダンジョンが発生しており、アカリが通う学校は魔物ハンターの養成校だった。万年最低ランクの少女が最強の魔王に成り代わったことに気付かぬまま、いじめっ子や横暴なプロハンターが次々と返り討ちに遭っていく……。
Web小説分野で鳴らした作家が原作を担う本作は、「ダンジョン」「魔王」「異世界と現代地球を結ぶゲート」「ランク制の実力主義社会」といった、Web小説で盛んな要素を盛り込みつつも、意外なほど「ジャンプ」マンガとしてしっくりくる。
「週刊少年ジャンプ」「少年ジャンプ+」が培ってきた「ジャンプ」らしさ、そして「ジャンプ」が代表する少年マンガらしさとは何か。それは端的に言うと、大人のロジックに反骨を見せる若い精神だ。世の中を分かった風情で目下の人間をナメて、頭を押さえつける強者に大人げない気持ちの力で立ち向かう。そこに少年マンガの「らしさ」がかかっている。
だから、実は「ジャンプ」マンガ/少年マンガの主人公は別に正義が必須ではないし、未成年じゃなくてもいいし、なんなら男でなくてもいい。「週刊少年ジャンプ」史上には怪盗の成人女性が主役で大ヒットした作品だってある。ホラーめいた表情でニタリと笑い、傲岸不遜に暴れる魔王様でも、底辺少女を見下していたぶろうとする連中を向こうにまわすことで立派にヒーローの格を持てるのだ。
その上で、『ラスボス少女アカリ』の妙味は、本人が負けを心から望んでいる点だ。自分より強い人間と出会いたいのに、見つからない。だったら見込みのあるやつを鍛えてやればいい! 最強の怪物が、自分を倒させるため若者を導く先生になる……そんな仕立てもまた「週刊少年ジャンプ」本家に成功例がある。
強者を育てようという魔王の思い付きのもと弟子のポジションに据えられるのが、学校でアカリに挑んでへこまされたお嬢様・間島華南(まじま・かなん)だ。彼女に「強くなったら その力でワタシを殺せ」と告げるアカリの笑顔が印象深い。言いかたは物騒だが、それは少年少女の可能性を肯定し、未来に望みを託す姿勢。アカリは変化球なキャラでありながら、まわりまわって少年マンガの芯をちゃんと通している。
では、そうした内容に縦スクロールマンガという表現はどう作用しているだろうか。
縦スクロールマンガはコマ単位のショットをつなぐ形式だが、これは1度に1つの絵面を読者の目に入れることで没入感をより高めやすい。だから、読者の目を決めセリフや決め技にバシっと集中させて、「キマった!」という快感を強めることができる。バトル少年マンガの気持ちよさと縦スクロールは、その点で相性がいい。
「縦スクロール形式で楽しむ『ジャンプ』マンガ」として新味と王道をブレンドした『ラスボス少女アカリ』。あるいは、そうやって新旧にとらわれない自由さそのものが「少年ジャンプ」の遺伝子と言うべきなのだろう。
文=宮本直毅