「4時44分にエレベーターに乗ると異界に繋がる」!? “怖い話が苦手”な教授とイケメン配信者が「都市伝説」をめぐってバディに! 異色の怪奇コメディが期待大
PR 公開日:2024/11/28
都市伝説は、あくまでうわさ話。実際に怖い思いをすることはない、とわかっているから無責任におもしろがっていられる。でも――もしかしたら本当に起こりうるかもしれない、と思えるリアリティもまた、醍醐味。『鬼を飼う』などの著者・吉川景都さんのマンガ『横浜黄昏咄咄怪事』(少年画報社)は、都市伝説研究の第一人者として活躍する社会学の教授・加賀美昭行と、開設2カ月でまたたく間に人気者となった動画チャンネル「都市伝説クルーズ」の配信者・東條リアムが出会い、「うわさ」と「本当」の狭間を行ったり来たりしながら、怪異に巻き込まれていく物語だ。
まず二人のキャラがいい。見目麗しくて紳士的なふるまいも含めてメディアで人気の加賀美は、20年ものあいだ、第一線で活躍してきた。ところが実は、たまたま出した自著が大当たりしただけで、怖い話は苦手。そろそろ引退しようと考えていたところ、立て続けに送られてきたのが「みなとみらいの某タワー44.4階44号室に来い」という差出人不明のメール。4時44分にエレベーターに乗ると異界に繋がると噂されるその場所に、最後の仕事だと足を運んだ彼は、その部屋の住人がリアムであることを知る。そしてこのリアム、ミステリアスな雰囲気をただよわせる美少年……と思いきや、加賀美を激推しする、わりと愛重ためのファン。とある理由で「呪い」を探しているそうで、その協力を加賀美に求めたのである。
真夜中にタワーを這いまわる、貯水タンクに落ちて死んだ作業員の霊。AI画像生成で自殺の名所を入力すると何度も現れる一人の女性。迷いこんだ洋館で「さがしもの」を見つけるまで帰してくれない少女。呪いのダンスを間違えると現れるという首狩り男。0時過ぎの神社で行われる死者の霊と交流する「たまわれたまわれ」の儀式――。
あまたの都市伝説に立ち向かう二人の奮闘は意外にもコミカルだ。リアムに出会って初めて本物の怪異に遭遇した加賀美と違って、リアムにとって都市伝説が現実として立ち現れるのは、子どもの頃からの日常茶飯事(なんといっても44.4階44号室の住人である)。霊を特別扱いしないリアムを介して遭遇する彼らは、どこか人間味(?)が溢れていて、いかなる事情があって人ではなくなったとしても、それぞれ人格があるものなのだなあと親しみも湧く。
とはいえ、その存在が生死の狭間にあり、うっかりすると命をとられることには変わりない。加賀美が20年も都市伝説を追い続けることができたのは、仕事としての責任感からだけでなく、彼自身にリアム顔負けの好奇心が満ち溢れているからだ。年のわりにすれていなくてピュアな加賀美は、その好奇心に負けて、本当に危ない場所へ足を踏み入れかねないところがある。その裏には、「実はこれこれこういう事情があるのでは」と、うっすら陰を感じさせてくるところもまた、本作の魅力。風貌からしてアレかしら、とわかる人にはピンときそうな、リアムを狙う組織(?)が見え隠れしているのも気になる。
2巻ではその組織の正体とリアムが追う「呪い」の関係、そして加賀美の秘密もきっと明かされていくはず。現代を切りとる怪奇コメディ、今後の展開も期待大。
文=立花もも