令和ロマン・髙比良くるま「俺の根本には“いじめられたらどうしよう”がある」。何度も読み返すマンガ『モテキ』から学んだ自意識との付き合い方【私の愛読書インタビュー】
更新日:2024/11/25
反面教師
――作品を読まれて、どうでしたか?
くるま:僕は中学・高校と男子校で過ごしたので恋愛経験がほぼなかったんですよ。いろんな女性に振り回されて誰ともちゃんと付き合えない主人公の幸世を見て「俺もこんな風になっちゃうのかな」なんて考えながら読んでいました。
――主人公とご自身を重ねて読まれていた?
くるま:最初は重ねていたと思います。その後、大学に入ったら女の子がみんなかわいすぎて全員のことを好きになっちゃうんです。そんな時、本棚にある『モテキ』と目が合うわけですよ。
――(笑)
くるま:俺、いま幸世みたいになってるぞ。よくないぞって。
――反面教師にしていたわけですね。
くるま:そうですね。高校生~浪人時代にはバイブル的に読んでいたのが、大学時代、特に彼女ができてからは反面教師的に読むようになって。「ウジウジしてたら相手をイライラさせるんだ」って学べるわけですよ。読むタイミングによって作品の見え方が変わるのがおもしろいんですよね。
本当の自分なんていないから
――『モテキ』は女性キャラクターも魅力的ですよね。
くるま:幸世だけじゃなくて女性キャラを見ても「あ、これ俺だわ」って思うことがあるんです。それって究極の読書体験じゃないですか? 中東で生まれ育った人が村上春樹作品を読んで「どうして自分のことが書かれているんだろう」と感じるって話を聞いたことがあるんですけど、自分とは全然違う属性の人に感情移入できるのが読書のすごいところだと思うんです。
――ちなみに、今はどのキャラクターに感情移入していますか?
くるま:今は小宮山夏樹という女性キャラクターですね。彼女の「知ってもらいたい“本当の私”なんてない」「100人いたら100人の頭の中で見える私って全部違うのよ。そんなの全部責任持てないわ」ってセリフを見てめちゃくちゃ共感したんです。
――令和ロマンが有名になるにつれて、くるまさんも世間からいろいろなことを言われるようになったでしょうし。
くるま:人の目に晒されれば晒されるほど、分析・考察みたいなことをされて「本当は、くるまはこう考えているはずだ」とか好き勝手言われるんですよ。
――なるほど。
くるま:芸人としてYouTubeや舞台、テレビでやってることは別にいいんです。ある意味、虚像なので。でもプライベートや本性を見抜こうとする押し付けには、うんざりしてしまうんですよね。
――そういった勝手な考察・分析を押し付けてくる人には、どういった対応をするのでしょうか?
くるま:プライベートで直接会える人、特に恋愛的な関わりであればひたすら説明します。ネットではいろいろ言われているけど、俺が今話していることが本当だからって。不特定多数の人に対して説明するのはなかなか難しいですよね。