SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第41回 私と「私」
公開日:2024/11/27
なんだかんだいい歳になり、周りは結婚だなんだを通り過ぎ、子供の話なんかをしている。もちろんそれぞれの家にはそれぞれの苦労もあるようで、時には「いやア、参ったよ」なんて言いながら頭を掻いて愚痴をこぼしたりしている。そんな友人の姿を見ていると、大人じゃんこいつ、って思うと同時に、幸せの最たる形を目の当たりにしているような気がする。いやいや、齢三十七にもなって何を今更って話なのかもしれないが、最近殊更強く感じる。
まア所詮人間なんてものは一人だ。自分だけの人生があって、その人生と名付けられた険しい道は驚くことに自分一人しか歩くスペースがない。どれだけ親しかろうが、血が繋がっていようが、その道を誰かと一緒に歩くことなんて不可能だ。ただその自分専用の凸凹した道を誰かの道と隣り合わせにして歩くということが、人間には出来ちゃうっていうんだから驚きだ。互いが互いの道を引き寄せあって、ピッタリくっついたり、時には少し離れたりを繰り返して当たり前のように結婚だなんだって言ってるけど、これは実はものすごい崇高なことなのではないかと感じ始めている。
本当に尊いことだと思う。
個人的な話になるのだが、私の目の前の道には、実は私の他に「私」という存在が常に歩いている。いきなり矛盾してんじゃんって感じなのだが、自分専用であることからは逸脱していないと思うので悪しからず。あ、ちなみにこれぶっ壊れてる、とかそういう話ではないし、多重に人格があるとか、自分ってちょっと変わってるんですわ的なアピールでもないから安心してください。一旦深呼吸してね。はい、続けます。
いつからこういった感覚になったのか、明確に覚えてはいないが、とにかく私は「私」と共存している気がしている。あくまで私は「私」であり、「私」もまたあくまで私であるのだが。それは時として自分を脅かし、たまに笑わせてくれ、あるときは怒らせ、気が付けば慰めてくれる。それは「私」も同じことを感じているようで、時として怯え、たまに和み、ある時は憤り、気が付けば求めてきたりする。
客観的に見た「私」は時になんだか醜くて、たまに案外すげエじゃんって思うこともあるので、まず間違いなく「私」も私をそう見ている。だからうまいこと励ましたり、調子に乗らないように各々コントロールし合っている。
しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催。現在「都会のラクダ TOUR 2024 〜 セイハッ!ツーツーウラウラ 〜」を開催中。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中