伸びやかなギターとシンプルな構成が心に響く『傘はいらない』楽曲による力強いメッセージに「あなたの音楽がだいすきです」の声

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公開日:2024/12/2

 今回は、ASHIMOさんが11月11日に投稿した「傘はいらない」を紹介する。

文/小町 碧音(こまち みお)

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 ふわりと柔らかな音の流れは、広大な緑の中で一息つくような心地よさを感じさせる。なかでも、引きつけられるのは、伸びやかに響きわたるエレキギターのサスティン。言うなれば、この残響音は楽曲に流れる生命線の役割を果たしており、ときに優しく、ときに力強い。その確かに刻まれた痕跡は、最後の瞬間まで鮮明だ。

 一見シンプルな雰囲気ながらも、聴き込むほどに繊細な音の綾が耳に絡みつき、いつまでもその余韻に浸っていたいと思わせる魅力を放っている。

 音声合成ソフトの小春六花の人間に近い歌声とノスタルジックな旋律。複雑なボカロ曲とは対照的に、シンプルな構成で心に届くメロディラインが、日本人のDNAに刻まれた郷愁に触れてくる。
 成長した今の主人公と、幼い頃の主人公の姿が対比的に描かれた歌詞。なんと言っても、そこから新たに生まれる切ない感情がポイントだろう。

 たとえば、サビの<降り注ぐ苦しみ全部晒して>からのフレーズは、大人になった主人公の心情、<かすり傷で泣いてた>からのフレーズは、幼い頃の記憶を描いたシーン。
 このような現在と過去の主人公が交錯する歌詞に、水たまりの水面を挟んで足を合わせる成長した主人公と、幼い頃の主人公を描いたMVのイラストが重なることで、もともとの楽曲の持つシンメトリーな表現の美しさが、より一層、明確な形になって浮かび上がってくる。

 主人公の成長を象徴するフレーズ、それが「傘はいらない」だ。タイトルであり、サビの最後にも現れるこの言葉は、かつての脆さや不安を象徴していた傘を捨てるという決意表明として堂々と映る。

 あまたの困難を乗り越え、内面の強さを手に入れた主人公にとって、もう傘は必要ない。「傘はいらない」「降り注ぐ苦しみ」といった比喩表現には、作者のこだわりを感じる。

 さまざまな対比から作品に眩しい光をともなう美しさが形成された「傘はいらない」。よく観ると、MVにも虹が映りこむシーンがあり、そんな雨上がりの空に架かる虹のように美しい情景が、目の前に広がっていく。ひとつ言えるのは、本曲には、言葉と音で繊細な風景画が描かれているということ。

 

 まっすぐ前を向いて歩いていく、楽曲に込められた力強いメッセージは、希望の翼に変わり、いま、明日という名の“未来”へと羽ばたき始めた。

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