「SCP財団」がマークする未知の怪物・シャイガイ。脱走した超キケンな怪物 vs. 特殊能力に目覚めた小学生を描く、注目の児童書
PR 公開日:2024/12/6
突然芽生えた謎のスキルに、与えられた「人類を守る」という使命。秘密の組織の一員として立ち向かうは、現代の科学では説明できない超キケンな未知の生物。——ああ、そんな設定だけでも、この上なくワクワクする。「絶対子どもが喜ぶ本だ」と思って読み始めたが、気づけば、大人の私まですっかりのめりこんでしまった。
そんな本が『SCPハンター シャイガイを確保せよ!』(黒史郎:著、古澤あつし:イラスト/ポプラ社)。「人類を救う」使命を与えられた小学生の奮闘を描き出した児童書だ。この本は、ネットで人気の「SCP財団」のノベライズ本として、子どものみならず、大人からも注目を集めているのだが、あなたは「SCP財団」をご存じだろうか。
「SCP財団」とは、「自然法則に反する異常な生物・現象を封じ抑え込むことを任務とする秘密結社」という設定の架空の組織。世界中のクリエーターたちが職員として「SCP財団」や「異常存在」にまつわる創作を、「報告書」という形で公開。ホラー&SFテイストのその内容は多くの人を魅了してやまず、ゲームをはじめ、「SCP財団」を基にした二次創作も人気を博している。そんな「SCP財団」から生み出されたこの児童書もまた、私たちの想像力をこれでもかというほど刺激する。未知の生物、不思議な現象にドキドキしながら、異常存在の捜索・捕獲に没頭させられてしまった。
主人公は、小学5年生の相原カケル。ある日、カケルは幼馴染の嶋ヒナタとともに、地面につくくらい長い腕と、縦に異様に長い頭をもつ、身長2メートル以上の人型の怪物を目撃する。その場所にいた「SCP財団」職員・ツルギによれば、それはシャイガイ。1週間前、異常存在を確保・収容・保護する「SCP財団」の施設から脱走した怪物で、顔を見られると、見た相手をどこまでも追いかけ、必ずその命をうばうという超キケンな性質があるらしい。カケルとヒナタに特殊なスキルがあることを見抜いたツルギは、ふたりにシャイガイの捕獲に協力するよう依頼する。そして、すでに「SCP財団」の仲間となっていた、同じ学校・同じ学年の二条アユムとともにシャイガイを追うことになる。
超キケンなシャイガイ相手に、カケルたちは、突然芽生えた特殊スキルを武器に立ち向かっていく。走れば走るほど速くなるスキル「アクセレート」をもつカケル。ふれたものを溶かすスキル「キャンディ」をもつヒナタ。左手でふれた生物の記憶から右手でふれたものに関する情報を消すスキル「イレーサー」をもつアユム——どのスキルもカッコいい。彼らはスキルをどう活かして、シャイガイを捕まえるのか。ぶつかり合いながらも、次第にチームになっていく彼らの奮闘には、手に汗握らされ、自分も彼らの仲間になったような興奮を味わわせてくれる。
あらゆる標識に次々変形しては、それにまつわる事象を引き起こす道路標識。つまらない冗談を聞かせると、言った相手の顔にむかって時速約160キロで飛んでくるトマト。美術館にある有名画家の絵画でも銃や戦車でも、どんな物体でも無から作りだすことのできるウサギ——この物語に登場する、シャイガイ以外の異常存在も恐ろしくも愛らしい。物語の挿絵のイラストもまた魅力的で、特に必見は、巻末の「SCPオブジェクト調査報告書」。図鑑のように、イラストと説明で異常存在がまとめられたこのページは、眺めているだけで心躍る。「他にはどんな異常存在がいるかな」「自分だったらどんな特殊スキルがほしいかな」。想像力や創造力、冒険心をかきたてるこの本は、親子一緒に間違いなく楽しめる1冊だ。
文=アサトーミナミ