Twitter、Facebookで赤っ恥をかかないための文章術 何より「論理的であれ」
公開日:2016/1/6
電車にのればスマホを見ている人ばかりというこの時代、おそらく大半の人は何かしらのSNSとつながっていることだろう。SNSの利点はいろいろあるが、中でも「誰でも気軽に情報発信できる」のは大きい。もちろん自らは投稿しないという人もいるだろうが、確実にブログが主流だった時代よりも「自ら発言すること」のハードルが下がっていることは間違いない。
この「情報発信」だが、SNSにおけるコミュニケーションの大半は「文章」がベースになっている。ということは、国語や作文がニガテだろうが関係なく、見渡せばみんな当たり前のように文章を書いているわけだ。ならばその文章に、人々はどのくらい気を配っているのだろうか?
実はネットの文章にはコワい側面がある。一度書いたものは容易に取り消せず、おかしな文章はそのまま書き手の能力や教養を刻印したまま、不特定多数の人に共有されてしまう。たとえば感情的な言葉をネット上に書き込む行為にしても「大勢の人が道行く往来で、大声で怒鳴っているのと同じ」――そんな指摘をするのは、感覚ではなく論理で日本語を理解する画期的指導法により「現代文のカリスマ」として受験生にあがめられている出口汪氏だ。日頃からメールやネットに書き込まれた文章に危機意識を持っていたという氏は、このたび最新の著書『出口汪の「最強!」の書く技術』(水王舎)で、デジタル時代を生き抜くための文章術を公開している。
デジタル時代の文章に必要なのは何より「論理的であること」と出口氏。不特定多数の読み手を相手に、拡散が容易なデジタルデータで「書く」という行為において、「相手に主張をきちんと伝える」ために必要不可欠なのが「論理」だというのだ。SNSでの書き込みはもとより、メールで用件を伝えるとき、あるいは企画書を書くとき(デジタルデータで書けば瞬時に拡散してしまう)、徹頭徹尾「論理的」に書くのが最重要だと強く訴える。
よく作文について「話すように書け」と言われることもあるが、それは大きな間違い。話すときにはニュアンスで伝わったり、一瞬で消えるので間違いも残ったりしないが、デジタルではそうはいかないからだ。では「論理的に文章を書く」にはどうすべきか、本書はそれを教えてくれる。
具体的な内容を見ていくと、まずは「一文は要点となる主語と述語、目的語と、それを説明する飾りの言葉で出来ている」を基本に、助詞や指示語といった少々お勉強ちっくな基本文法の見直しからスタート……と、ここでいきなりハードルを感じた方はご安心を。実はこの本、ダメ系OLのハルカを相手に出口氏が懇切丁寧に教えるという会話形式で進んでいくので、解説はかなりわかりやすい。ハルカになったつもりで例題にチャレンジしていくと、あらためて日本語の持つ論理的なルールをいくつも再発見し、自然に文法の論理的構造を意識できるようになってくるから不思議だ。
なお文章というのは、そうしたルールでできた一文が集まったものであり、同じく論理的に捉えられるべきもの。ひとつのまとまった文章は、たいてい要点となる主張と、それを論証するための文章でできており、主張をきちんと伝えるためには論証のコツをマスターするのがポイントになる。本書ではそのテクニックとして「イコールの関係」「対立関係」「因果関係」に基づく論証法も具体的に指南してくれるので、是非参考にしたいところ。
その他、さまざまなテクニックがまとめられているが、たとえば日々の心がけとして「日本語の規則を日常的に意識しつつ、なるべく論理的な文章を、その論理を意識しながら読む」ことが大きな力になるというから、チャレンジしてみるのもいい。この本を上手に活用して、まもなくやってくるお正月休みに自分を鍛えておけば、デジタル社会もコワくない。新年からは伝わる文章が書ける「使える人」になろう!
文=荒井理恵