常に第一線で活躍を続けられる理由は?『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』が明かすその魅力

芸能

公開日:2016/1/28


『小泉今日子はなぜいつも旬なのか(朝日新書)』(助川幸逸郎/朝日新聞出版)

 いつの時代も、気が付くとイイ感じのポジションに収まっている。正確に言うと、「ポジションに収まっている」「上手く立ち回っている」という感じのあざとさ・計算した感じは1ミリもなく、「自然とそこにいる」ように見える……。

 小泉今日子という女性への世間のイメージは、上記のようなものではないだろうか。若い人のなかには、彼女がアイドル歌手としてデビューした過去も知らず、ただ「ステキな女の人」と思っている人すらいるかもしれない。

小泉今日子はなぜいつも旬なのか(朝日新書)』(助川幸逸郎/朝日新聞出版)は、そんな彼女の魅力に、育った環境や時代背景、同時代のアイドル達との比較を通して迫っている。面白いのは、ほかのアイドル達と比較すると、デビュー当初の彼女は「これ」といった個性は持っておらず、今に至るまで積極的な自己主張もしてこなかったということだ。

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 松田聖子のような天才シンガーではないし、中森明菜のように「俺が何とかしてやらないと」という気持ちもかきたてない。本は多く読んでいても、それを教養自慢には使わない。育った環境が過酷でも、それをネタにしたトラウマ告白本は書かない。中山美穂のように「ここではないどこか」を求めてパリに移住したりもしない……。

 それでも変化を繰り返しながら活動の幅を広げ、同時代のアイドルが不安定な飛行を繰り返す中で、彼女がずっと一線で活躍してこられた背景には、「わからないことを持ちかけられたときには、とりあえず言われたとおりにする」姿勢があると著者は分析する。そして彼女は、川勝正幸氏に“パンパース小泉”とまで言われたように、受け入れたものを何でも吸収し、自分のものとしてしまうのだ。

 いつも自然体で“天才”には見えない彼女だが、何でも受け入れ吸収してしまう柔軟さや、「理想がなかったからここまでやって来れた」とまで言えてしまう力みのなさは、やはり天賦の才能なのではないか……と本書を読むと感じてしまう。ただ、本書の最後には、彼女の分析を通して得られた「小泉今日子に学ぶ7カ条」がまとめられているように、その生き方は完璧に真似はできなくても、多くの人にとって参考になるはずだ。

文=古澤誠一郎