劣等感の塊!崖っぷち女がサブカルに目覚めたらこうなる…『わたしはあの子と絶対ちがうの』
公開日:2016/2/1
他人に対して、意味もない劣等感を抱くことはありませんか? 自分にはないモノを持っている人を見ると、憧れとともに生まれる、小さな嫉妬心…。『わたしはあの子と絶対ちがうの』(とあるアラ子/イースト・プレス)の主人公・アラ子も、他人に対する凄まじい劣等感に悩まされる一人。結婚を意識していた彼氏にフラれ、30歳を目前に定職もなく、自信喪失の日々を送ります。そんな中、サブカル好きのコミュニティに入ったアラ子は、どんどんその道に傾倒していき…という、女の爆発しそうな自我を、ゆる~く、鋭く描いたコミックエッセイです。
著者である、とあるアラ子の実体験を基にした本書は、女同士のマウンティング、アンチサブカルチャー、SNS鬱といった、若い女性が一通り経験する「あんまり話したくない体験談」があますところなく、あけっぴろげに描かれています。読んでいる途中でも「アラ子さん、その気持ちすごくわかるけど、女子はみんなひた隠しにしてきたんだよ!」と、思わずツッコんでしまうほど。
イベントをきっかけに、たくさんのアーティストやクリエイターと出会ったアラ子は、彼らの話についていくことができず困惑。そこでまず“サブカル好き”に対する劣等感を覚えます。知らない話題が、目の前でどんどん進んでいくときのあの疎外感…。うん、わかるわかる。そういうこと、ありますよね。どうにか話題に入っていこうにも、「◯◯監督(マニアックな名前が入る)の初期の作品は~」なんて会話されたら、すでに素人が入り込む空気ではない、みたいな。
そこでアラ子が取った行動は、「彼らよりも、たくさん知識を身につける」こと。コミュニティ内で話題にのぼった 映画や音楽をかたっぱしから鑑賞し、感想をSNSで報告。にわか評論家の誕生です。興味を持つこと自体にはなんの問題もないはずだけど、アラ子の気持ちのベクトルは、“人より知識を身につけて優位に立ちたい”という方へと向かっていきます。
自分よりも業界人の知り合いが多い女性を見つけては嫉妬に狂い、そこそこ有名な映画監督にTwitterでフォローされれば、何よりも喜び…ということを続けていた結果、ついに古くからの友人から「自分を持ちなよ」とキツイ一言を浴びせられてしまうのです。軌道修正するために、アラ子が始めた新たなる挑戦とは?
アラ子の結末は、本書で確認していただくとして…。笑えるけど、読後、自分についてちょっと考えたくなる一冊です。
文=中村未来(清談社)