“アトピー”に苦しんだ女子高生が気づいたこと
公開日:2016/2/7
高校時代というものは、一番多感な時期。自分がどう見られているのか、他人の目ばかりが気になってしまう。それが女子ならば、なおさらのこと。けれど、もしもそんな時期に“アトピー”になってしまったら……? 『アトピーが教えてくれたこと』(青山ぱふこ/イースト・プレス)は、女子高生時代にアトピーに苦しめられた青山氏が、その体験を赤裸々に描いたコミックエッセイだ。
青山氏は生まれつきのアトピー体質だったものの、その症状は軽めで、他の女の子と同じように高校生活を満喫していたという。ところが、高校2年生のあるとき、その青春の日々に暗雲が立ちこめる。つるつるだった顔に、ほんの少しの赤みが出てくるようになったのだ。
青山氏はすぐさまかかりつけの皮膚科へ。そこで処方してもらった薬を塗れば、症状はすぐに治まった。けれど、またすぐに症状が現れてしまう。発症しては薬を塗布し、また発症しては薬を塗布し……。気づけば、その悪循環に陥ってしまっていた。やがて青山氏は、「薬を塗れば肌がキレイになる」と思い込んでしまい、ほぼ毎晩薬を塗りたくるようになってしまう。
そんなとき、ネットで知ったのが、アトピー薬に含まれる“ステロイド”の危険性。依存してしまうと、だんだん薬が効かなくなっていく。それならば、脱ステロイドしよう――。青山氏はそう決意したのだった。
しかし、そこで待ち受けていたのが、“リバウンド”と呼ばれる、激しい離脱作用。ステロイドを抜くことで、毒出しのように症状が一気に悪化してしまうのだ。けれど、そこで薬に頼ってしまったら意味がない。生活習慣を改善し、肌の自然治癒力だけで回復を目指していく。それが脱ステロイド治療なのだ。
治るまでの辛抱。そう理解していても、毎日毎日悪化していく患部を眺めるだけ、というのは、思春期真っ只中の女子高生にとっては、非常につらいことだっただろう。そんな状況でも学校を休むわけにはいかない。アトピーのつらさを理解していない人たちからは、「気にしすぎ」「薬塗ればいいじゃん」「そんなにひどいか?」と、心ない言葉を投げかけられてしまう。
しかも、青山氏のことを理解してくれなかったのは、友人たちだけではない。家族もまた、そのつらさをわかってくれなかった。食事を野菜中心にすること、花粉がつかないように衣類は室内に干すこと、体質改善に必要なことはさまざまあったが、父も母も全面的に協力しようとはしてくれなかった。そこで募るストレス。それが症状の悪化を招き、心は荒み、周囲との関係は悪くなっていく。まさに負のスパイラルだ。どうして誰も自分のつらさをわかってくれないのか。どうして自分だけがこんなに悲しい目にあうのか。どうしてどうして……。
しかし、あるとき、青山氏は気づく。周囲の理解を得ようとしていなかった自分に。恥ずかしくて友人たちにアトピーのことを説明できない。つらさのあまり家族に八つ当たりしてしまう。そうやって、周囲に壁を作っていたのは、紛れもない自分だったのだ。それに気づいたときから、青山氏の生活は少しずつ変わっていった。そして、「自分は多くの人に支えられて生きているんだ」と、感謝の気持ちを抱くようになっていく――。
世の中には、つらい経験をしたからこそ見えてくるものが少なくない。青山氏が気づいた、“人とのつながりの大切さ”もそのひとつだろう。そう考えると、青山氏の青春時代は、とても実りあるものだったような気がする。本書のラスト、青山氏はこう綴っている。
次は私が、悩んでいる人、苦しんでいる人の力になれたら……
最も多感な時期を、アトピーに苦しめられたひとりの女の子。彼女が出した答えが、すべてを物語っているのではないだろうか。
文=前田レゴ