茶色と黄色のマグカップ、どちらのコーヒーがおいしく感じる? 色の秘密を解く
公開日:2016/2/12
毎日、目にするさまざまな色。
普段、何気なく見ているが、好みの色で性格がわかったり、色を見ることで気分が変わったりと、生活を豊かにするいろいろな意味がある。
そんな人生を変えるかもしれないほどの効果を持つ色の力について書かれているのが『色の秘密』(野村順一/文藝春秋)。本書は色の謎を科学的に解明し、色の深さを知ることができる。
色の効果は多様だが、まずは本書の冒頭に書かれている時間感覚について紹介しよう。
人の時間感覚は色によって大きく影響されるため、赤やだいだいなど明るい暖色系の部屋では時間が長く感じられ、反対に寒色系の部屋では時間が短く感じる。
これには筋肉が大きく関係している。ある研究者が、筋肉の反応をテストしたところ、赤色の光のもとでは反応が12%早くなるが緑色光の下だと遅くなってしまったという。この研究結果により浦島太郎も海の中という青一色の空間にいたため、竜宮城であっという間に時が立ってしまったのではないかという説明が成り立つというのだから興味深い。
本書には、時間感覚の他にも色によって惑わされる感覚が書かれている。その一つが味覚だ。
目隠しをして、鼻を軽くつまみ、リンゴを食べて銘柄を当ててもらうという味覚テストを行った。しかし、このテストは“いかさまテスト”。実際に食べたのはじゃがいもであり、リンゴではない。しかし、多くの被験者が「これは○○のリンゴかな?」と銘柄を答えたという。その他“いかさまテスト”で、赤ワインを飲むと食酢だと思い、牛肉のスープは塩を入れたぬるま湯に感じてしまう。この実験により、味覚と視覚が密接に関係していることがよくわかる。
このことを踏まえ、本書に書かれたある実験を紹介しよう。まず、ラベルをつけない4個のコーヒー缶を用意する。コーヒー缶は、それぞれ濃い茶色、赤、青、黄に色分けして4カ所のブースに置き、仕切りをする。次に一つの湯沸かし器で、4杯分のコーヒーを淹れカップ(白またはアイボリー)に注ぎ、コーヒーカップのそばに置く。被験者はそれぞれのブースに入りコーヒーの缶の色を見ながら飲む。その結果、濃い茶色に「風味や芳香が非常に濃い」と答えた人が73%と一番多かった。赤は「風味や芳香がやや濃い」と答えた人が多く84%、青は「風味や芳香がやや薄い」と答えた人が一番多く79%、黄色にいたっては「風味や芳香が非常に薄い」と答えた人が87%と一番多くなった。同じコーヒーであるのに、濃い茶色の缶と、黄色の缶との差が非常に大きく、色によって味覚が変わることがわかる。
コーヒーを飲むときは濃い茶色のマグカップに入れて飲む。缶コーヒーでも、濃い茶色のパッケージのものを選ぶとコーヒーがおいしく飲める可能性大だ。
その他にも、色についての性格診断が詳しく掲載されており、色の秘密を知ることで人間関係もスムーズにいきそうだ。
色の、与える影響はあまりにも広範囲に及ぶ。人生を豊かにしたいなら、ビジネス本や自己啓発本よりも、本書で色について学んだほうが大いに役立つのではないだろうか。
文=舟崎泉美