生きるヒントが詰まっている!? 『いつだってマンガが人生の教科書だった』
更新日:2016/2/16
マンガを読むのは面白いが、それだけじゃないことを教えてくれる一冊が『いつだってマンガが人生の教科書だった』(千田琢哉/あさ出版)。本書では、これから生きていくうえで降りかかるだろう難題を解くヒントはマンガに描かれていると、著者がマンガから読み解いた人生の哲学を、世の中のルール・人間関係・才能・生き方の4つの項目に分けて紹介しています。
紹介されているマンガは『ドラゴンボール』や『北斗の拳』など、みんなが知っている名作がほとんどです。たとえ知らないマンガでも、ちゃんと作品の概略が書かれているので、原作に興味もつきっかけになることでしょう。それでは、本書の一部を紹介します。
本物の才能の違いは、努力なんかじゃとても埋まらない
『ドラゴンボール』
連載終了後も根強い人気をほこる『ドラゴンボール』は、「努力」「友情」「勝利」を描いたジャンプの王道バトルマンガです。7つ集めると、どんな願いでも1つだけ叶えてくれるドラゴンボールを集めるために、主人公・孫悟空を中心にストーリーが展開していきますが、この悟空がものすごく強い。悟空の強さに敵わなかったキャラクターはたくさんいますが、その中でも、子ども時代から悟空とともに修行していたクリリンは、痛いほどの才覚の差を感じていたはずです。しかし、クリリンは嫉妬に狂うようなことはなく、教育者としての道に進みました。自分の役割を知り、生きる土俵はさまざまだと知って生きたクリリンは、悟空より弱いかもしれないが十分かっこいい。まあ、彼は人類最強ですが。
正しさを執拗に叫ぶのは、あなたが弱いからだ
『ブラックジャックによろしく』
『ブラックジャックによろしく』は、佐藤秀峰による日本の大学病院や医療現場の現状を描いたマンガ。ところで、大人になって社会にもまれると、正論は必ずしも通るものではないと感じる機会はないでしょうか? 世の中には正しいことよりも、そうでないことが優先される現実があり、その決定権を握っているのは強い者。『ブラックジャックによろしく』では、院長が青臭い新米研修医に「正しいってのは弱いってことだ」「強いってのは悪いってことだ」と説くセリフがあり、本書でも世の真理を説いた言葉として紹介されています。これをどう感じるかで、いまの自分の立ち位置が見えることでしょう。
独りぼっちでいるときより、恋をしているときのほうが、ずっと寂しい。
『北斗の拳』
核戦争によって文明と人々の秩序が失われた荒廃した世界で、伝説の北斗神拳伝承者であるケンシロウの生き様を描いたハードボイルドバトルマンガ『北斗の拳』。本書の中で、著者は『北斗の拳』の登場人物たちはみな寂しそうだと評しています。たしかに、「ひでぶ」と喚く悪役以外は、寂しそうな表情が多いように思えなくもないのです。とくに恋をしているキャラクター、ユリアやケンシロウは、快活に笑うより、寂しそうな憂いのある表情がまず思い浮かびます。しかし、その寂しさのある表情が彼らの魅力だとはいえないでしょうか? 寂しさから逃げて恋をしないより、恋をして寂しい思いをしているほうが、人としてずっと魅力的に見えるということでしょうか。
本書では、他にも数多くのマンガと著者の言葉が紹介されています。その中のほとんどは夢の詰まった優しい言葉ではなく、学校では教えてくれないようなリアルな人生の教えです。しかし、むしろそちらのほうが生きるヒントとなるのではないでしょうか? マンガは面白いだけじゃない、そう改めて教えてくれる一冊。きっと、あなたの心に突きささるマンガがあるはずです。
文=ナツメ