清野とおるの赤羽か、カマタミワの蒲田か? ヤバイ街経験者のヤバイ話【前編】
更新日:2020/4/13
かたや『東京都北区赤羽』を筆頭に「街モノ」「ヤバい人」「1人メシ」などを実録マンガで描く鬼才漫画家。かたや一人暮らし女子の日常を描くアメブロ『半径3メートルのカオス』で人気の女性イラストレーター。
一見すると遠い存在に見える漫画家・清野とおると、イラストレーター・カマタミワが、2月19日に同日発売される新刊『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』2巻・『ウヒョッ!東京都北区赤羽』5巻・『ひとりぐらしもプロの域。』を記念し、清野とおるのホームタウン・赤羽で対談! ともに1人暮らしのベテランの2人が、食事から掃除、ゴキブリ退治まで“一人暮らしあるある”の話題で共感しつつ、実は清野マンガの大ファンというカマタミワが、その隠された本性を披露する対談となった。
カマタミワの住んでいた蒲田は「赤羽と並ぶヤバい街」(清野)
――カマタさんは以前から清野さんのマンガのファンだそうですね。
カマタ:そうなんですよ。『東京都北区赤羽』の1巻が出た頃から読んでいて。
清野:ありがとうございます。 『ひとりぐらしもプロの域。』の最初の話でも、僕のマンガにも触れてくれて本当に恐縮です。
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Ⓒ清野とおる/講談社
※カマタが自宅で一人映画祭を楽しむ場面で、清野のマンガ『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』の名前と、作品内で取り上げられたポテトチップス「コンソメトリプルパンチ」が登場
カマタ:その、勝手に書いちゃって怒られるんじゃないかと心配だったんですけど……。
清野:いやいや、喜びでしかないです。
――カマタさんは『東京都北区赤羽』のどんなところにハマったんですか?
カマタ:私、前に蒲田に住んでいた時期に、そこで出会った面白い人のことをホームページで文章にしていたんです。アクセスもそこそこあったので、「私、けっこう面白い?」みたいに思っていたんですけど、『東京都北区赤羽』を読んで「これは私にはできない!」と打ちのめされました。
『ウヒョッ!東京都北区赤羽』5巻
清野:女性は変な人には近づいたら危ないですし、男のほうがそこは有利ですからね……。あと、やっぱり蒲田に住んでいたからカマタさんなんですね。
カマタ:そうなんです。6年ほど住んでいたので、友達がこのペンネームを付けてくれました。
清野:蒲田も「蒲田か赤羽か」っていうくらいヤバい街ですよね。
カマタ:清野さん、cakesの記事(https://cakes.mu/posts/8147)で蒲田が気になっているって仰ってましたよね。いつも赤羽にいるおじちゃんと、蒲田で遭遇した話も驚きました。
清野:ありましたね。終電も近い頃、駅に向かって裏道を歩いていたら、自転車をから漕ぎしているおじちゃんがいて。
カマタ:そこからもう可笑しい(笑)。
清野:その人が、赤羽でよくキャッチしているおじさんだったんです。それで「あの、赤羽の方ですよね?」って話しかけたら、「そうだよ。俺は住んでいるのが蒲田で赤羽は仕事場だ」って。
カマタ:別に近い街でもないのに(笑)。しかも清野さんが行ったタイミングで出会うって、スゴい偶然ですよね。
蒲田に住んでいた頃はゴミ捨て場を漁っていた(カマタ)
清野:それにしても『ひとりぐらしもプロの域。』に出てくるカマタさんの部屋はオシャレですね。
カマタ:でも実は100均で買ったものとか、ゴミ捨て場から拾ってきたものが多いんですよ。
清野:ゴミ捨て場ですか。
カマタ:蒲田に住んでいた頃、よくゴミ捨て場を漁っていたんですよ。私のマンガは女性読者が多いので、あまりそういう話は描かないようにしていたんですけど(笑)。あとパチンコもよく行っていて、キャッシングもしていましたし……。
――『東京都北区赤羽』を昔から愛読していたとか、ゴミ捨て場を漁っていたとか、カマタさんも実は、かなり赤羽寄りの人なんですね(笑)。
カマタ:あんなほっこりした本を描いておいて、実はこういう人間なんです(笑)。編集さんには「あの本のどこがほっこりだ!」って言われたんですけど、私としては「独身女性あるある」を描いたつもりの本です!
――その『ひとりぐらしもプロの域。』の中では「干っぱなしの洗濯物ハンガーからパンツを収穫してそのまま履く」「お米は米びつに移さず、袋の上を引きちぎってそのまま使用」とか、かなりズボラな面も明かしていますよね。
カマタ:でもブログの読者さんからは「私もやる!」という声もありましたし、言わないだけで同じことをしている女性は多いと思いますよ。
清野:その話が書かれたページは、ご自身の色んなザツな部分を晒していましたね。「朝にご飯を食べたお茶碗を洗わず昼も使う」というのは僕は無理です(笑)。
カマタ:でも、この本の編集担当の女性は「これは私もやったことがある」って言っていたんですよ。そこは男女差があるのかもしれないですね。
――あと、『ひとりぐらしもプロの域。』の中では、女友達との家飲みパーティーの話もありますけど、これも男はしないですよね。カマタさんみたいに、女友達とベッドで一緒に寝たりとかも(笑)。
清野:絶対しないですね。男と並んで眠るなんて鬱陶しすぎますよ。
ゴキブリを倒した時の「オワタオワタ!」という快感
清野:あとカマタさんの本の中では、ゴキブリとの戦いの話も面白かったです。僕もゴキブリに対する戦い方は2つあるんですよ。一つは壁に止まったゴキブリへの戦法。まずは、少し深さのあるダンボールやお椀みたいなもので、壁のゴキブリをカポって被せるんですよ。それで下敷きとか厚めの紙をスススっと、壁とそれの間に通して密閉する。
カマタ:頭良い!それで外に持って行くんですね。
清野:そうですそうです。でも、最初のカポッと被せる瞬間のストレスがヤバいんですよ。「被せに行った瞬間に飛ばれたらどうしよう」っていう。
カマタ:しかもゴキブリって、なぜか人をめがけて飛んで来ますよね(笑)。出られるように窓を開けてるのに!
清野:そうなんですよ。もう一つはゴキブリホイホイを使う戦法。ごきぶりハウスを4つくらい作って、まず一つをゴキブリの近くに置く。すると、やっぱ気になって近づいてくるんですよね。
カマタ:はいはい。
清野:それで近づいてきたら、他の方向にもハウスを置いて挟み込むんです。それでちょっと息を吹きかけると、ゴキブリがパニックになって、ハウスの中に入ろうとする。ハウスシートの粘着シート部分に一歩踏み入れた時の快感といったら、もう最高ですよ!「ゴキブリ!オワタオワタ!」って!
カマタ:こっちの方法はゲーム感覚ですね(笑)
取材・文=古澤誠一郎
「おこだわっちゃえば、いいんじゃない?」ーー昨今、老若男女の間で交わされる奇妙な挨拶の起源がこのマンガ作品にあるのだという。この巻でも、薄皮ミニパンの「魔法の食べ方」、乾燥梅干しを悪用した「立ち飲み屋テロ」、中国うなぎの「錬金術」、「シアワセの寝ぬ生活」、著者の清野ですら絶望した「前代未聞の読書術」などの「おこだわり」を紹介している。あにはからんや、読んだとたんに実践したくなってしまうとは……。
アメブロで超絶人気!『半径3メートルのカオス』の著者カマタミワによる待望の初書籍!!18年めになる一人暮らしのすべてをさらけ出しました。オールカラー、大容量の176ページ!しかも描き下ろし100ページ超!!ブログを熟読してきた人にもソンをさせない読みごたえたっぷりの内容でお届けします。
『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』が『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』としてフェイクドキュメンタリードラマ化!
清野とおるのコミック『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』を題材に、ドキュメンタリー監督の松江哲明が描くフェイクドキュメンタリードラマが4月から放送開始! コミックでお馴染みの「ポテトサラダの男」や「帰る男」らの“おこだわり人”も登場する。一方で、本人役で登場する松岡茉優、伊藤沙莉らの演技は「どこまでが2人の本当の姿なのか」と分からない部分もあり、ドラマはコミックとは全く異なる完全オリジナルストーリーへ進んでいく……。
■『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』』
2016年4月スタート 毎週金曜深夜 0時52分~1時23分
放送局:テレビ東京・テレビ大阪 ほか
出演:松岡茉優、伊藤沙莉 ほか
監督:松江哲明
http://www.tv-tokyo.co.jp/okodawari/