結婚で損をするのは女性のほう? 買い物から、結婚まで、ニッポン人の損得勘定
公開日:2016/2/18
損得勘定といって、はじめに頭に浮かぶのはお金であろう。
全く同じ商品を別の店で安く買えた。同じ商品なのにポイントがついた。など、お金は数字として目に見えるため一番損得を感じやすい。しかし、損得はお金だけではなく、時間や人間関係などさまざまなものに及ぶ。そんな損得について、深く掘り下げているのが『損したくないニッポン人』(高橋秀実/講談社)だ。
本書には企業に損をさせたいがためにクレジットカードにポイントを貯め、使ったところで解約する女性。32インチのテレビを購入しようとしたが、店員のプラス3万円で40インチにできるという割安感にのせられ40インチのテレビを買った男性。節約と思いたくないためエコという言葉を使いながら節約に励む主婦など、さまざまな人にインタビューし損得について掘り下げている。その中でも最も印象的なのは結婚についての損得だ。
最近は結婚のコスパが良いか、悪いかという議論をよく見かける。
本書に登場する金融関係に勤める宮川さん(42歳、仮名)は、仕事での評価も高く、社会的な地位のある女性だ。彼女は、結婚の候補者を「案件」、結婚相手の欠点を不動産のように「瑕疵」と呼ぶ。そんな彼女は「いろいろな物件が上がってきますよ。でも、ほとんどが瑕疵物件」と言い、結婚願望はあるもののなかなか結婚に結びつかない。
その理由について彼女は結婚における女性株が上昇し、男性株が下落しているからだという。
どういうことかというと、昨今は、男性の年収が下がってきている。しかし、女性の年収はそれほど下がってはいない。男性の場合は1000万円から下がって500万円。女性は以前と変わらず500万円。同じ年収500万円でも、女性は以前から500万だったため、生活力や周囲への気配りが身についている。しかし、男性は1000万円の時と生活態度が変わらず、偉そうなふるまいをする人も多い。そのため、男女の間に人間力の差が出たという。
宮川さんのように、社会で活躍する女性は増えた。しかし、男性は、昔と比べると社会的な地位が上がりにくくなっている人もいる。そういった背景があるからこそ、女性のほうが損をしているという感覚を抱くのだろう。また、本書の中で、著者の高橋さんは宮川さんに結婚しない理由を聞くと「言い寄ってくるのは年下ばかりなんです。(中略)おいしいモノを食べさせてもらって、セックスをさせてもらっておきながら、結局若い女のところへ行く。年上で自信をつけてから若い女の子にアプローチをする。いってみれば練習台」と答えた。宮川さんは結婚をチラつかせながら言い寄ってくる若い男性を相手に、自分を消費することで損したくないのだろう。できる女性のため若い男性に頼られるだろうが、それゆえさまざまな損について考えてしまうのではないだろうか。
宮川さんの例は、本書に書かれている一つのケースであり、結婚における考えはさまざまだ。結婚に限らずだが、友人、恋愛など全ての人間関係において損得という概念だけでは計り知れない重要なものがある。しかし、誰もが心のどこかで結婚制度や、結婚生活の中で、損得について考えてしまう部分はあるのではないかと考えさせられる。一生のことなのだからキレイごとだけでは済まされないのも事実だ。
お金から人間関係まで、人生においてはさまざまな損得があると考えさせてくれる本書。読めば読むほど、何が損で何が得かわからなくなるのは筆者だけではないだろう。
文=舟崎泉美