テレビに学ぶこととは? 聞き手の目と心を惹きつけるコツ

テレビ

更新日:2016/2/19


『図解 テレビに学ぶ 中学生にもわかるように伝える技術』(天野暢子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 多くの人を惹きつけるテレビ番組は他の番組と何が違うのだろうか? 瞬時に多くの人の心をつかむ人気番組の作り手は、ただ電源の入ったテレビの前にいただけの人も自分の番組に引きこんでしまう。ならば、番組作りの裏側で行われている工夫がわかれば、仕事のプレゼンや日常のコミュニケーションが今よりうまくいくようになるかもしれない。そこで、今回は自分の話に耳を傾けてもらうためには何をどうしたらよいのかを教えてくれる『図解 テレビに学ぶ 中学生にもわかるように伝える技術』(天野暢子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を紹介する。

テレビには伝えるための技術が満載!

 テレビは映像と音声だけでなく、音楽、文字、図などさまざまな要素を組み合わせて情報を発信することができる優れものだ。ただし、一瞬画面に映ったものが次の瞬間は消えて無くなってしまうという特徴がある。しかも、テレビの前にいる人はリモコンでいつでもチャンネルを変えることができる。だから、テレビ番組を制作するスタッフは、チャンネルを自分の番組に合せてもらうだけでなく、他へ移動されないような工夫を凝らす。短時間で相手に情報を伝え、理解させるための技術がテレビに満載されているのはそのためなのだ。

具体的な人気番組のよい部分をお手本に!

 この本の中には具体的な番組名がたくさん出てくる。例えば、NHKの『あさイチ』や日本テレビの『スッキリ!!』などの情報番組では、メインの司会者が右に、アシスタントは左に立っていることを挙げ、その理由を司会者が右手で画面を指し示すとき手の動きがわかりやすいからだと説明している。また、TBSの『NEWS23』など報道番組ではベテランのメインキャスターの他に、比較的若いサブキャスターがアシスタントとして付くことを挙げ、サブキャスターの役割は視聴者の知りたいことをメインキャスターに質問することだと述べられている。このように具体的な番組名が挙がると、説明しようとしていることが番組の一場面としてイメージしやすくなる。このこと自体もプレゼンなどのお手本として利用できそうだ。

advertisement

プレゼンにも使える小道具の作り方と使い方

 プレゼンではテレビの情報番組などでよく使われる指示棒やめくりフリップ、マグネットパターンなどが威力を発揮する。パワーポイントなどに慣れてしまっている人たちには、テレビの中だけのものと思われているアイテムが登場すると新鮮に感じられるからだ。

 この本のおもしろいところは、指示棒やめくりフリップ、マグネットパターンなどアイテムの使い方だけでなく作り方まで載っているところだ。上手に使うとスライドやパワーポイントなどよりも注目を集められるというから試してみるといいだろう。

五感のうち最大の力を発揮するのが視覚!

 テレビでは五感のうち嗅覚や触覚は残念ながら感じることができない。ただし、それらを視覚で補う工夫はされている。「なんだかカレーのいい匂いがしそう」「触ったらきっとふわふわなんだろうな」と感じるのは目であって、鼻や手ではない。つまり、テレビの手法を活かして人に伝え、きちんと理解させるのであれば、視覚に訴えることをメインに考えるといい。例えば服の色やデザイン、持ち物、視線の向きなどで自分をどのように見せるかをコントロールするだけで、相手は話をきちんと聞いてくれるようになる。これくらいの工夫なら普段の生活の中でもすぐに応用が利きそうだ。

試しやすく効果がわかりやすいのが魅力!

 この本に掲載されている番組制作の裏で使われている技術は、どれも意外と簡単にできるようなことばかりだ。プレゼンのようなビジネスの場面だけでなく、近所の人たちとの井戸端会議の場でもジェスチャーを使ったり、名前を呼んで意見を求めたりするような手法は利用することができる。

 いくらテレビの手法を利用すると言っても視聴率は気にしなくてよいのだから、あれこれ最初から欲張って大ヒット作を作ろうとしない方がいいだろう。構えることなく簡単なことからやってみて、いつもよりも話をしっかり聞いてもらえるようになったら別の手段もプラスしてみるというのがうまくいくコツかもしれない。

文=大石みずき