ピース又吉がきっかけ!? 俳句をSS作品として紡ぐ「五七五の小説工房」オープン!堀本裕樹×田丸雅智対談【前編】

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16

(左)堀本裕樹さん、(右)田丸雅智さん

定期的にWEB上で俳句を公募し、特選、秀逸、佳作を決定して選評をつけ、さらにその中から二句を選んでショートショート作品として紡ぐという、俳人の堀本裕樹さんとショートショート作家の田丸雅智さんがコラボレートする企画「五七五の小説工房」が2月25日に双葉社の文芸WEBマガジン『カラフル』にオープンする。このコラボレーションにはあの芥川賞作家が大きな役割を果たしていたという話から、俳句を作るコツまで、縦横無尽に語り合っていただいた。

【後編】はこちら

 

堀本裕樹 俳人。1974年和歌山県生まれ。國學院大学卒。「いるか句会」「たんぽぽ句会」主宰。著書に『いるか句会へようこそ!恋の句を捧げる杏の物語』(駿河台出版社)、『富士百句で俳句入門』(筑摩書房)、『芸人と俳人』(又吉直樹との共著/集英社)、句集『熊野曼陀羅』(文學の森)など。
堀本裕樹オフィシャルサイト

advertisement

 

 

田丸雅智 ショートショート作家。1987年愛媛県生まれ。東京大学大学院工学系研究科卒。2011年『桜』を発表しデビュー。著書に『ショートショート・マルシェ』(光文社)、『日替わりオフィス』(幻冬舎)、『たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座』(キノブックス)など。
個人サイト:「海のかけら」

 

『芸人と俳人』(又吉直樹との共著/集英社)

『たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座』(キノブックス)

お互いに凝縮された「型」を持つ俳句とショートショート

田丸 「五七五の小説工房」の企画は、僕と堀本さんで考えて提案したんです。2人の共通の知り合いに又吉直樹さんがいるんですけど、僕は個人的に又吉さんと堀本さんのメールマガジン『夜の秘密結社』を読んでたりして、ずっと追いかけてたんです。それである人を介して堀本さんにご縁があって、初めてお会いした日に又吉さんが芥川賞を受賞したんですよ! 「今日発表があるんですよね~」なんて言ってたんですけど、実際に受賞が決まったと連絡があったときにはあまりの嬉しさに堀本さんとハグして喜んで、その写真を撮って又吉さんに送ったりしたんですよね。

堀本 ええ、その日は僕の主宰する「たんぽぽ句会」に田丸さんに来ていただいて。会って1時間くらいしか経ってなかったのに、いきなり抱き合って喜んだんですよね(笑)。

田丸  仲の良い人でもなかなかないことですよね、抱き合って喜ぶって(笑)。

堀本 外国人じゃないんですから(笑)。

田丸  その句会に参加していた素人の方の俳句からインスパイアを受けてショートショートを書いたんですが、すごく評判がよかったんです。それで俳句からショートショートを書くのってありじゃないか、堀本さんとコラボする作品っていうのは面白いんじゃないかな、と思ったんです。

堀本 一句からショートショートを作り出すというのは、これまでにない企画だったので、いいアイデアだなと思いましたね。世界で一番短い詩であり、凝縮された省略の極致である俳句と、小説というジャンルの中で一番短く凝縮されているショートショート、どちらも「型」を持っているという共通点がありますから。

田丸  そう、どっちも型がありますよね。

堀本 型で勝負するという類似性や親和性があるんですよね。俳句は5・7・5の17音で作られますが、そこから30枚、40枚という短編を作るのは、何かしら内容を足したり、ふくらませていかないといけないのでちょっときつい。でもショートショートはそれよりも短いから、想像力とアイデアのバランスが取れる、ちょうどいい長さなんですよね。

田丸  そうなんですよ。そして俳句は俳句、ショートショートはショートショートで成立した作品で、どっちかに寄り掛かるのではなく、きちんと立っていることで相乗効果がある。そうするともともと完成した型の中で高め合えるし、お互いに空想の余地があるんですよね。

堀本 どちらの作品も独立性があって、俳句は俳句で読めるし、ショートショートはショートショートで楽しめる形になるんですよね。

田丸  俳句は昔からずっと続いてきているものですが、ショートショートって星新一さん以降は廃れていたところがあって、ようやく最近再評価されつつあるんです。だからこそ、この企画は今生まれたんだろうなと思いますね。

堀本 俳句は伝統文芸と言われて、若い人の間でも少し見直されているのかもしれないけれど、まだまだなんですよ。「季語や切字って何?」という人も多いので、どう俳句を見せていけばいいのかずっと考えていたんです。ただ俳句だけになってしまうと、もともと俳句に興味を持っている人しか集まらない可能性がありますけど、ショートショートとコラボすることによって、お互いに新しい人たちを集められるという相乗効果がありますよね。

田丸  ショートショートもまったく同じで、もっと多くの方に読んでもらえるように努力していかないと、小説なんて誰も読まなくなってしまうんじゃないか、という危機感があるんです。今回の企画で俳句をやってみたいと思う人、そしてショートショートの新しい読者が増えるといいなと思っています。

難しいことにとらわれず、まずは楽しんで作る

田丸  今回は俳句を募集して、堀本さんが選んだものを僕がショートショートにするという企画なんですが、僕も俳句を作ることがよくあるんですけど……難しいですよね(笑)。応募するにあたって、どう作ったらいいですか?

堀本 とにかく純粋に楽しんで、作りたいものを作って送ってくださればいいと思いますよ。逆に「この句をショートショートにしてもらいたい!」と思ってしまうとダメになってしまうでしょうね。

田丸  それをやってしまうと、句として立たないものになりますよね。確かにショートショート化されるということがチラつくとは思いますけど、意識せずに作ってほしいですね。

堀本 ショートショートになってほしい、という祈りを込めるのはいいと思いますが(笑)。ただ客観性のない俳句というのは、表現が乱れるんですよ。その乱れは、どうしても読む人に見えてしまうものです。小説を書く人だって「これを映画にしてもらいたい!」と思って書きませんもんね?

田丸  そうですね(笑)。僕もショートショートを書くときって、楽しんでやってますから。何を感じて俳句を作ったのか、というエッセンスがショートショートになるわけですから、まずは感じたことを俳句にするという楽しみを大事にしてほしいですね。

堀本 本当は僕が定型というのはこう作るんです、季語はこうですよ、切字はこう使ってください、というのを教えられればいいんですが。でも細かいことを言い出すといろいろあるので、とにかく五七五で、季語を入れて作ってみてほしいですね。「五七五の小説工房」が回を重ねていくと、「こういう句が入選してショートショートになるのか」ということが具体的に見えてきて、それが指針になって作る意欲が湧いてくるでしょうね。

田丸  俳句もショートショートもどんな世代の人でも作れるものですから、楽しんでほしいですよね。それで即興で話したことをまとめて、それをショートショートにするというイベントを堀本さんと一緒にやるんですよね!

堀本 ……不安です(笑)。

田丸  いや、大丈夫ですよ! 2人で話す中でいろいろと出てきたことを僕がまとめて、最終的にショートショートにするというイベントなので、即興で作ることを楽しんでもらえたら絶対大丈夫です!

堀本 絶対大丈夫と言われると、逆に不安になります……(笑)。その場で対応するということが楽しみに変わればいいのですが……

田丸  なりますなります!(笑)

堀本 はい、頑張ります(笑)。

【後編】はこちら

 

「五七五の小説工房」オープン記念
堀本裕樹さん×田丸雅智さん
俳句×ショートショート講座

●3月10日(木)19:00~
●三省堂書店池袋本店 書籍館4階 イベントスペース「Reading Together
残席残りわずかです。お早めにお申し込みください。

取材・構成・文=成田全(ナリタタモツ)