コミュ力向上のために、まずは質問力を磨こう
公開日:2016/2/26
コミュニケーション能力、略してコミュ力。今やリア充のみならず社会に生きるものすべてに必須のスキル扱いされています。ネット上の住民から就職の面接官、果ては教育ママ(死語か?)まで。誰もが一致して大切だと言い切る資質というのは、現代ではかなり珍しいものではないでしょうか?
そんなコミュ力の重要性を10年以上前から言い続けているのが、今や大学教授としてよりコメンテーターとして有名であろう、斎藤 孝先生。今回は斎藤先生の初期の著作『質問力(ちくま文庫)』(斎藤 孝/筑摩書房)から、コミュ力ならぬ質問力向上の秘訣を学びます。
「質問の仕方はプレゼンテーション以上に、その人の実力をあらわにする」、つまり質問力=その人の実力を測る指針というのが、本書のコンセプト。では、肝心の質問力を向上するために、どうすればいいのでしょうか? 具体的な回答が、本書には書かれています。まず一つ目は、「真似をすること」。上達するには良いものをみるのが一番だ、と斎藤先生は言います。「質の高い対話の例をたくさん分析し、なぜそれがすぐれているのかと見抜く目を養うこと」が本書の狙いだというわけです。その通り、本書は中盤以降にかけて、ズラリと具体的な対談例で埋め尽くされています。
次に、日々のトレーニング。ここでも、具体的なトレーニングの方法が示されています。一つは「質問力」ゲーム。プレゼンターと質問者にわけて、順番に質問していく、という簡単なゲームですが、評価するのはプレゼンテーションの内容ではなく、質問のほう。それも質問された人が評価する、というのも面白いですね。もう一つは、メタ・ディスカッション。何人かが集まって討論をし、それを周りの人が第三者視点で評価するゲームです。「採点者側にまわって上から見下ろす立場に立つと、途端に文脈が見えて来る」のが、このゲームの面白さだと、斎藤先生は言います。
ところで、質問力といっても、どんな質問が良くて、どんな質問が悪いのでしょう? 斎藤先生は座標軸を使って、わかりやすく表現しています。まず「具体的か抽象的か」という軸と「本質的か否か」という2本からなる座標軸。一番良い質問は、「具体的かつ本質的な」質問で、最も悪いのが「抽象的かつ非本質的」な質問。後者に至っては、どうでもいい、答えるに値しない質問だといえるでしょう。
もう一つ座標軸が紹介されています。縦軸のプラスに「自分が聞きたい」、マイナスに「自分は聞きたくない」。横軸はプラスが「相手が話したい、伝えたい」で、マイナスが「相手は話したくない、答えたくない」となっています。質問として最も適切な「自分が聞きたくて、相手も話したい」質問がストライクゾーンで、質問者はここを目指すべきでしょう。また、「相手は話したいけど、自分は聞きたくない」質問は「気配りゾーン、大人ゾーン」と名付けられています。確かに、社会に出るとそうした質問も必要だと多々感じますよね。「自分は聞きたいけど相手は話したくない」ゾーンは「子供ゾーン」と命名。相手の状況や関心を顧みず、自分の聞きたいことだけを質問している状態で、結局のところ相手への関心のなさが浮き彫りになってしまうゾーンです。最後に「自分は聞きたくないし、相手も話したくない」ゾーンは「聞いてみただけゾーン」。ここは、お互いに時間の無駄、といえるでしょう。
このように質問を分類した上で、たくさんの具体的な対談例を挙げて、質問者の良い点を教えてくれます。豊富な例から、自分に合った「これは!」という例が必ず見つかるはず。もちろんすぐに高度な質問力を身につけるのは至難の業。ですが、一つの模範的な「型」として覚えておけば、今後の人生で大いに役立つのではないでしょうか?
文=A.Nancy