今も読み継がれる、我が子を亡くした米国人女性が書いた詩

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16


『最後だとわかっていたなら イラスト版』(ノーマ・コーネット・マレック:著、佐川 睦:訳、panaki:イラスト/サンクチュアリ出版)

もし、あの時が最後だとわかっていたなら、私はあの人にどんな言葉をかけただろう…。大切な人、愛する人との突然の別れの時、これまでの接し方に後悔のない人は少ないのではないでしょうか。もっと声をかけてあげられたのでは? もっと出来ることがあったのでは? 時がたつにつれて次々と現れる後悔の念は、時に激しく、時に静かに心を揺さぶります。

2001年9月、ニューヨークで起こった同時多発テロ。多くの罪のない人が亡くなりました。そしてそれ以上に多くの人がかけがえのない大切な人との突然の別れに打ちのめされました。

最後だとわかっていたなら』(ノーマ・コーネット・マレック:著、佐川 睦:訳/サンクチュアリ出版)は、アメリカ人女性のノーマが事故で亡くなった息子を偲んで書いた詩ですが、9.11テロの後、ネットを通じて世界中に広がり、多くの共感を呼びました。その一部を紹介しましょう。

advertisement

あなたがドアを出て行くのを見るのが最後だとわかっていたら
わたしはあなたを抱きしめて キスをして
そしてまたもう一度呼び寄せて 抱きしめただろう

微笑みや 抱擁や キスをするためのほんのちょっとの時間を
どうして惜しんだのかと
忙しさを理由にその人の最後の願いとなってしまったことを
どうして してあげられなかったのかと

「ごめんね」や「許してね」や「ありがとう」や「気にしないで」を
伝える時を持とう
そうすれば もし明日が来ないとしても
あなたは今日を後悔しないだろうから

今回新たにイラスト版の本書が発売されたのは、ツイッターに投稿された詩と、詩に合わせた柔らかいタッチのイラストが、10代20代の若い人たちを中心に熱烈に支持されたことがきっかけでした。

日本でも、2011年3月11日、地震と津波により、沢山のかけがえのない命が失われました。家や土地、住むところさえも失い、バラバラになった家族、愛する人との別れ。突然の惨劇にただただ、言葉を失うばかりでした。どんな人にも明日は約束されていない。最愛の人との別れ、それはある日突然訪れるかもしれないのです。どんなに最善を尽くしたと思っていても、別れの際に後悔しないことはないかもしれません。それでも少しでも後悔を減らすために、今を大切に生きるために、この詩を心の片隅にいつも留めておきたいですね。

文=朝倉志保