なぜ太平洋は「太」で、大西洋は「大」なの?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16


『日本人の9割が答えられない 日本の大疑問100』(話題の達人倶楽部:編/青春出版社)

多くの人が知っていることは本当に「常識」なのか? 当たり前だと思っていることの中には、子どもや外国人に質問されて、初めて何でだろう? と感じることがたくさんある。そこで、今回は常識人ほど当たり前だと思いがちな「なぜ?」の部分に答えをくれる『日本人の9割が答えられない 日本の大疑問100』(話題の達人倶楽部:編/青春出版社)を紹介する。

茶道でお茶を飲むときに茶碗を回すのはなぜ?

茶道のたしなみがない人でも、茶道でお茶を飲むときには茶碗を回す作法があるということは知っているのではないだろうか? しかし、なぜ回すのかは知らないかもしれない。実は、茶碗には正面がある。もてなす主人は客に茶碗の最も美しい部分を向けて差し出すため、そのまま口に運ぶと正面の美しい部分に口を付けて汚すことになってしまう。そこで、茶碗を回して反対側に口を付けて飲むようにするのだ。正面向きで受け取った茶碗は時計回りに2度回して反対を向け、飲み終わったら口を付けた部分を指でぬぐってから反時計回りに2度回して正面に戻すのが作法だ。

イケメンは「二枚目」、道化は「三枚目」。なら「一枚目」は何?

色男や男前を「二枚目」、笑いを取る道化役を「三枚目」などという言い方をする人は昔ほどいないかもしれないが、「二枚目」「三枚目」が歌舞伎の看板の並び順から来ていることを知っている人は意外と多い。それなら「一枚目は何?」「看板は何枚あるの?」という疑問を持つ人もいるのではないだろうか? 実は、歌舞伎の看板は全部で8枚あり、一枚目は当然座長を表す。歌舞伎が人気の娯楽だった時代、何番目に並べられているかでどのような役をするかがわかるものだった。とは言っても、今の世の中、人気者に「あなたって本当に一枚目ですね!」と言っても通じないだろう。

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太平洋は「太」で大西洋は「大」なのはなぜ?

太平洋と大西洋の「たい」の字が違う理由をご存じだろうか? 実は、それぞれの海洋の日本名が付けられた経緯が違っていたからだ。大西洋の英語名は“Atlantic Ocean”つまり「アトラスの海」なのだが、ギリシャ神話の神の名前では日本人になじみがない。そこで、ヨーロッパ大陸の西側にある大きな海の意味で「大西洋」と名付けられた。一方、太平洋はマゼランの名付けた“El Mare Pacificum”つまり“平和な海”を日本語に訳したもの。平和の意味の「太平」と海を表す「洋」を合わせたため「太平洋」となったのだ。

氏と姓は別物? 皇族に名字がないのはなぜ?

氏と姓は同じだと思っている人が多いようだが実は違う。氏は血筋を表すもの、姓は家の格式を表すものだ。歴史で鎌足が藤原姓を、尊氏が足利姓をもらったというような言い方をするが、正式には氏を授けられたと言った方がよいだろう。

元々は氏+姓+名というように、日本人にもミドルネームのようなものがあった。例えば、徳川家康なら、氏=源、姓=朝臣、名前=家康という具合だ。つまり、正式名は源朝臣家康で、徳川は公式な場では使われていなかった。徳川を用いるときは徳川次郎三郎と言ったそうだが、その名前で呼ばれても、あの徳川家康の顔は浮かびそうにない。ちなみに、氏も姓も天皇から授けられるものであるため、皇族には氏も姓もないのだ。

この他にも、古い横書き看板の文字が右から左に向かって書かれている理由や金額を表す単位の円が“EN”ではなく“YEN”である理由など、常識として知っていることのちょっとした疑問に次々と答えてくれる。当たり前だと思っていたことも意外と奥深いと感じた。それほど厚くない本なのに、端から端までしっかり読めば、「知っているだけの常識」を「人に語れるうんちく」に変えてくれそうだ。

文=大石みずき